『徳山大五郎』『ラブラブエイリアン』『HiGH&LOW』……深夜ドラマが生み出す新たな潮流

 闇金業者に借金をする債務者たちが転落していく姿を生々しく描いた『闇金ウシジマくん』(MBS系)は、今回でSeason3となり、9〜10月に劇場版が二作公開される。本作は毎回連続ドラマの終了後に映画版を制作しており、連続ドラマから劇場版へという流れがイベント化している。他にも、『ディアスポリス 異邦警察』(MBS系)や、『HiGH&LOW~THE STORY OF SOWRD』(日本テレビ系)など、テレビシリーズ終了後に映画化される深夜ドラマは近年増えている。これらの劇場版はテレビ局主導で作れていた『踊る大捜査線』や『ケイゾク』に較べると小規模だが、熱いファンに向けたイベントとして盛り上がっている。特にEXILE TRIBEのメンバーが出演する『HiGH&LOW』はドラマや映画だけでなくライブやアルバム、SNS、コミックスなど様々なジャンルに広がっている。そのため、ドラマ版はあくまで『HiGH&LOW』というプロジェクトの一部でしかない。

 既存のドラマの作られ方から大きく外れているため『HiGH&LOW』や『徳山大五郎を殺したのは誰か?』といった深夜ドラマに対して、こんなものはドラマではないと違和感を覚える人も少なくないのではないかと思う。確かにこれらの作品は、特定のファンに向けて作られたドラマで、間口はとても狭い。しかし、その世界を一度受け入れてしまえば、深くて濃い世界が広がっている。特にビジュアル面では新しい表現が次々と生まれている。こういった深夜ドラマから生まれた新しい流れがドラマシーン全体に波及すれば、停滞する民放ドラマの活力となるのではないかと注目している。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

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