脚本家・演出家/登米裕一の日常的演技論
竹内涼真は理想の“ヒロイン男子”だった? 若手演出家が読み解く『青空エール』
若手の脚本家・演出家として活躍する登米裕一が、気になる俳優やドラマ・映画について日常的な視点から考察する連載企画。第10回は、『青空エール』に出演している若手俳優・竹内涼真について。(編集部)
先日、映画『青空エール』を鑑賞して、竹内涼真君はヒロインが似合う俳優さんなのだと感じました。もちろん男性の役を演じていたのですが、でも私の中で竹内涼真君が演じた山田大介はヒロインなんです。ちょっと唐突ですよね。今回はヒロイン男子について解説させてください。
私は少女漫画が好きで、よく読みます。色々なパターンはありますが、王道は一生懸命努力を続ける主人公の女の子(ヒロイン)と、その主人公の努力を認めてくれる男の子(ヒーロー)の関係を描く物語でしょうか。
ヒロインは概ね、普通の子が多いですよね。そのヒロインが陰で頑張っている姿に、ハイスペックで、学園のアイドルだったり、天才型だったり、Sキャラだったりするヒーローがそっと気付いてくれる。ヒロインは努力を惜しまない人。ヒーローはそのヒロインの承認欲求を満たしてくれる人だと考えます。
『青空エール』では、土屋太鳳さんが演じる小野つばさがもちろん“ヒロイン”ですが、竹内涼真君が演じる山田大介も「何も持っていないけれど、努力だけは惜しまない普通の人」であり、物語におけるヒロインのポジションにいます。つまり『青空エール』は、“ヒロインとヒロインの物語”とも見ることができます。