『仰げば尊し』が視聴者の心に響く理由 作曲家・髙見優氏の仕事から考える

 しかしそこで、安保圭太が「そうかな!?」と割って入り、その瞬間に一旦BGM「忍び寄る影」が止む。そこから一人ひとりが木藤良蓮に対し想いを述べるシーンになると、BGMが「奈津紀の優しさ」になる。落ち着いた旋律でどこか儚く、だが愛と優しさが詰まったような慈悲深さを感じさせる曲だ。青春がギュッと詰まったようなセリフと役者たちの心こもった演技、それにBGMが相まって、なんともエモーショナルなシーンとなっていた。音楽は、頭で考えさせるよりも先に感情に直接響く。ともすれば、登場人物たちの演技が感情的に過ぎるように映りそうな場面だったが、音楽の効果で、観るものをその世界に没頭させることに成功していた。

 さて、今夜いよいよ最終回を迎える『仰げば尊し』。美崎高校吹奏楽部は果たして全国大会まで駒を進めることができるのだろうか。また、最終回ではどのような感動と奇跡が巻き起こるのか。今夜の放送では、そのBGMにも耳を傾けながら、彼らの運命を見守りたい。

(文=戸塚安友奈)

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