深田晃司監督最新作『淵に立つ』、カンヌ「ある視点」部門審査員賞に 浅野忠信「最高です!」
深田晃司監督の最新作『淵に立つ』が、第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門審査員賞に輝いた。
『淵に立つ』は、『ほとりの朔子』『さようなら』の深田晃司監督の長編5作目となる人間ドラマ。下町で金属加工業を営む夫婦のもとに突然一人の男が現れ、奇妙な共同生活が始まる。一見平和だった家族に“異物”が混入することで、夫婦それぞれが抱える秘密があぶり出されていく模様を描く。キャストには主演の浅野忠信をはじめ、筒井真理子、太賀、三浦貴大、篠川桃音、真広佳奈、古舘寛治らが名を連ねる。
現地時間5月21日夜に行われた授賞式に参加した深田監督は、「本当にとてもうれしいです。いろんな人に感謝を言わなくてはいけません。わたしの映画は本当に多くの人に支えられてきました。まずは、この映画のキャスト、スタッフにお礼を言いたいと思います」と、作品に関わったキャストやスタッフへの感謝の気持ちを述べながら、「日本には優れた監督が本当にたくさんいます。日本人はフランス映画が大好きで、フランス人は日本映画が大好きです。でも日本とフランスの映画の結びつきはまだまだ弱いと思います。今後、ふたつの国の結びつきがより強くなることを期待します。ありがとうございました」と、フランスと日本の関係についても言及した。
授賞式後には、深田監督、古舘寛治、筒井真理子の3人が囲み取材に対応した。深田監督は、「今回の映画は、スタッフ・俳優の総力で作った映画なので、私自身も含めてその力を認められた、ということが何よりもうれしいです。あの、これで運を使い果たしたかなと思っています(笑)」と笑いを交えてコメント。カンヌでは海外メディアの取材もたくさん受けたといい、「よく言われたのは、俳優の演技が素晴らしい、ということです。そして、この作品の家族の描き方が、これまでに描かれてきたものに比べると異質で、それが新鮮に映ったようです」と、海外からの評価を口にした。さらに、壇上で行ったスピーチについて、「緊張もあったのでたいぶ端折って話しました」と振り返りながら、「日本は優秀な監督は私だけでなくたくさんいます。ただ彼らが海外を目指すための制度は、まだ不十分で未熟だと思います。日本はこれだけフランス映画が好きで、フランス人もこれだけ日本映画を愛してくれているのに、残念ながら両者の間には一緒に映画を作るための制度がありません。例えば韓国とフランスの間には結ばれているのに、なぜ日本は結べないのだろう……。新しい才能がより外へ出て行くための制度、自由に映画を作るための制度が日本には不足しています」と改めて自身の考えを述べた。
古舘は、「こういった場での感想は難しいですね。こうゆう喜ばしいことにほぼ接点がない人生を送ってきましたので、どうゆう気持ちになればいいのか、わからない体がビンビンと反応しているんだと思うのですが、とにかく、発表の日まで(カンヌ国際映画祭に)残っていて本当によかったです」と率直な感想を述べ、「ここに座っていることだけでもとても誇らしい機会をいただいているのに、それでもここまできて、何も貰わなかったら寂しいだろうな、とか思ってしまう、人間はどれだけ欲深いのだろうかと。でもこの際なので、もっと欲深くいきたいなと思います」と語った。筒井は、「受賞してもしなくても最後まで残って、もし何か監督が受賞したら一緒にお祝いしたいと思っていたので、ここに残って本当に良かった、嬉しいです。さっきお話を聞いたら、本当に作品が最後まで競った末の銀メダルだったそうです。銀メダルという気持ちで、充分嬉しいです」と、「ある視点」部門グランプリに次ぐ審査員賞の受賞を喜んだ。
公式上映とレッドカーペットには参加していたが、カンヌから一足作に帰国していた主演の浅野も、「我々は妥協なくこの映画に挑みました、そしてこんなに素晴らしいところにたどり着けました! 皆様のおかげです!!! ありがとうございます! 最高です!」と、コメントを寄せた。
■公開情報
『淵に立つ』
今秋、有楽町スバル座、イオンシネマほか全国ロードショー
脚本・監督:深田晃司
出演:浅野忠信、筒井真理子、太賀、三浦貴大、篠川桃音、真広佳奈、古舘寛治
配給:エレファントハウス
英語題:HARMONIUM /2016年/日本・フランス/日本語
(c)2016映画「淵に立つ」製作委員会/COMME DES CINEMAS
公式サイト:fuchi-movie.com