「これは母と子の普遍的な話でもある」アカデミー賞ノミネート『ルーム』監督が脱出劇を通して描くもの

『ルーム』監督が語る、作品に込めた思い

ブリー・ラーソンは、今回の役に必要なオープンな面や優しさを持ち合わせていた

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ブリー・ラーソンとレニー・アブラハムソン監督 Photo credit: Jon Furniss

ーージェイ役にブリー・ラーソンを起用した理由はなぜでしょう?

アブラハムソン:ブリーは何といっても女優としてのスキルの高さに惹かれたんだ。『ショート・ターム』での彼女は本当に素晴らしかったが、彼女の人間性も素晴らしい。とても協力的で温かさがあり、ユーモアも持ち合わせている。特に今回の役は、子どもと密接な関係を築けるような人でなければいけなかったが、彼女はその鍵であるオープンな面や優しさを持ち合わせていたんだ。

ーージャック役のジェイコブ・トレンブイはどうですか?

アブラハムソン:ジェイコブは本人のキャラクターだね。すごくユーモアがあり、フレッシュで、頭もよくて、人から甘やかされていないという資質があった。カメラが追いたくなってしまうような資質というのは、大人もそうそう持っているものではない。子どもになるとさらに少なくなってしまうが、ジェイコブはそういう資質を持っているユニークな存在だったんだ。

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『ルーム』 (c)ElementPictures/RoomProductionsInc/ChannelFourTelevisionCorporation2015

ーー2人を監禁して“部屋”に閉じ込めるオールド・ニックの存在もかなり印象的です。彼のキャラクターを描く上で意識したことはありますか?

アブラハムソン:オールド・ニックの犯行動機を理解できるとはとても言えないけど、今回意識したのは、彼をモンスターとして描かないということだった。彼は人間としての失敗を重ねてきた弱い男だが、自分には女性と親密になる権利があると信じ込んでいて、その結果、ジョイの誘拐に手を染めてしまう。しかし2人の力関係の中では、ジョイのほうが彼に対していくばくかの力を持っていたりもするんだ。それは彼の中では“契約”となっていて、だから子どもを木の近くに埋めてほしいというジョイの願いも聞き入れる。ジョイのほうがオールド・ニックに対して優位であるように描かなければ、その部分も信憑性を持って描けなかったと思う。それができたのは自分でも誇らしく思うよ。

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レニー・アブラハムソン監督とジェイコブ・ トレンブレイ

ーー今回の作品では、“母と息子”という設定で描かれていますが、“父と息子”“父と娘”といった設定でも成立すると思いますか?

アブラハムソン:正直わからないな……。ひとつ言えるのは、ジョイがあの状況を生き延びることができたのは、彼女が特別な存在だったからだ。女性がみんな彼女のようにいくとは限らない。男性の場合は、そもそも“部屋”に監禁されて、子供を産むことはできないから、状況が変わってくる。だけど、子どものために自分を犠牲にするという気持ちであったり、親と子の関係で言えば、父親と子どもの関係もこの物語と等しく、すごくパワフルなものだと思っている。少なくとも、僕はひとりの父親としてそう思うよ。実際に子どもと一緒に監禁されて生き延びていた女性の例もあるけど、男性の場合であっても、やはりジョイのよう特別な資質が必要なんじゃないかな。

(文=宮川翔)

■公開情報
『ルーム』
4月8日(金)よりTOHOシネマズ 新宿、TOHOシネマズ シャンテほか全国順次公開
監督:レニー・アブラハムソン
出演:ブリー・ラーソン、ジェイコブ・ トレンブレイ、ジョーン・アレンほか
提供:カルチュア・バブリッシャーズ、ギャガ
配給:ギャガ
(c)ElementPictures/RoomProductionsInc/ChannelFourTelevisionCorporation2015
公式サイト:http://gaga.ne.jp/room/

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