>  > 『ルーム』監督が語る、作品に込めた思い

『ルーム』レニー・アブラハムソン監督インタビュー

「これは母と子の普遍的な話でもある」アカデミー賞ノミネート『ルーム』監督が脱出劇を通して描くもの

関連タグ
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 日本時間2月29日午前に発表される第88回アカデミー賞で、作品賞、監督賞、主演女優賞、脚色賞の主要4部門にノミネートされている『ルーム』。エマ・ドナヒューによるベストセラー小説を映画化した本作は、閉じ込められた“部屋”で暮らす母親ジョイとその息子ジャックが、その“部屋”から外に出るまでの脱出劇と、部屋の中で産まれ、外の世界を全く知らないジャックが、脱出後、初めて目にする世界でジョイとともに生きていく模様を描き出す。メガホンを取ったのは、マイケル・ファスベンダーが全編にわたってマスクをかぶって出演した異色作『FRANK-フランク-』を手がけたレニー・アブラハムソン監督だ。リアルサウンド映画部では、4月8日の公開に先駆け、アカデミー賞授賞式を控えるアブラハムソン監督に電話取材を行い、本作について話を訊いた。

「子どもの視点から映画を綴るということが、すごく面白いチャレンジだと感じた」

20160224-ROOM-Abrahamson03.jpegレニー・アブラハムソン監督 Photo credit: Jon Furniss

ーー前作『FRANK-フランク-』とは全く異なる作風でありながらも、世間と剥離した人物が主人公で、共通した部分もあると感じました。監督は今回の作品でどのような部分を掘り下げたいと思ったのでしょうか?

レニー・アブラハムソン(以下、アブラハムソン):この作品の設定は、普段目にはしないような極端な状況だけど、“子育て”という、親と子どもの絆が掘り下げられた、普遍的な話でもあるんだ。原作・脚本のエマ(・ドナヒュー)も、「とても純粋な親子の絆を描いているから、それが一体どういうものなのかを、まるで顕微鏡で観察するかのような物語になっている」と言っていた。通常は、パートナーや子どもの友達といった周りの人間、学校などの機関が存在する上で子育てをするけど、この作品の中では、母親がその負荷を全部担っている。母親がただひとりで、教育面やメンタル面を含めた、子どもの世界の全てを提供しなければいけない、一緒に作っていかなければいけないという状況に置かれているわけなんだ。このような極端な設定を通して、子育ての大変な部分と素晴らしい部分の全てを掘り下げたドラマを描こうとした。

ーー監督自ら映画化したいと、原作のエマ・ドナヒューに長文の手紙を送ったそうですが、原作のどのような部分に惹かれましたか?

アブラハムソン:エマの小説では、そのような極端な形でストーリーが描かれていたんだけど、僕も幼い子どもの父親なので、子育てという観点で、とても感情移入できる部分があったんだ。彼女がこのダークな状況を、気持ちが上がるような物語に作りあげたということも、とても素晴らしく思った。そして、幼い子役と仕事をするということ、子どもの視点から映画を綴るということが、ひとりの映画監督として、すごく面白いチャレンジだと感じたんだ。

20160224-ROOM-sub2.jpg『ルーム』 (c)ElementPictures/RoomProductionsInc/ChannelFourTelevisionCorporation2015

ーーエマ・ドナヒューは脚本も手がけていますが、映画化にあたり、監督から何かリクエストや指示はされましたか?

アブラハムソン:初めてエマと会った時に、実はエマの方から「脚本を書いてみたから、可能性があるか読んでみてくれる?」と言われたんだ。その脚本を読んで、「これでいける!」とも思ったんだけど、その脚本を2人で2年ほどかけてさらに練り上げていったんだ。「このシーンをこういう風にしよう」「このセリフをこう変えたらいいんじゃないか」というような僕の提案も、エマはとても柔軟に聞いてくれた。原作を守りたい、原作を壊したくない、というような感じではなかったんだ。だから、僕も素直にエマと話をすることができて、最高な脚本を作るために、2人でともに努力をしていった。そういうふうに、ずっと2人で話し合いながら作り上げていったから、僕のほうから何か具体的なリクエストをした、という感じではなかったね。

ーー映画の前半と後半で物語の舞台が大きく変わりますが、そのバランスをとるのはかなり難しかったんじゃないでしょうか?

アブラハムソン:この作品を作る上で、最大の挑戦かつ一番難しかったのが、部屋の中と外のバランスをとることだった。彼女たちが逃げ果せたことで、観客の興味が失われてしまったとしたら、後半はおまけみたいなものになってしまうと感じていた。ストーリーの後半にしっかりと付いてきてもらうために必要なものを考えた時、それはやはり、前半部分で“いかに観客がこの親子と繋がりを持てるか”ということだった。だから、後半に入った時に、「すべてが解決されたわけではないのでは?」という、少し不穏なニュアンスを出すことによって、「この先いったいどうなってしまうんだろう?」と、最後まで観客が付いてきてくれると思った。そうやって、前半パートで非常に深い繋がりを持った2人のキャラクターを、観客が最後までうまく見守ってくれると考えたんだ。

20160224-ROOM-sub3.jpg『ルーム』 (c)ElementPictures/RoomProductionsInc/ChannelFourTelevisionCorporation2015

ーー具体的にどの部分が1番難しかったですか?

アブラハムソン:前半から後半へと移る際には、僕も含め、作曲家や編集者は、その独特なテンションを作り上げなければいけなかった。それはジョイとジャックの再会のカタルシスの後からすでに、少しだけ感じられるようになっている。この部分は編集で最も時間をかけたパートかもしれない。特に後半に入ってからの最初のフェーズは、前半で作り上げたストーリーの要素を、改めて積み立て直してから後半へと繋げていかなければいけなかったからね。

      

「「これは母と子の普遍的な話でもある」アカデミー賞ノミネート『ルーム』監督が脱出劇を通して描くもの」のページです。の最新ニュースで映画をもっと楽しく!「リアルサウンド 映画部」は、映画・ドラマ情報とレビューの総合サイトです。

表示切替:スマートフォン版 | パソコン版