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『アクトレス〜女たちの舞台〜』が描く“時間”と“老い” オリヴィエ・アサイヤスの作家性を読み解く

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 今年6月に開催されたフランス映画祭2015。一般公開前に先駆け上映された、フランソワ・オゾン監督の『彼は秘密の女ともだち』やミア・ハンセン=ラヴ監督の『EDEN エデン』、女優としても活躍するブリジット・シィの監督第2作『夜、アルベルティーヌ』など、例年に比べても今年のラインナップは特に粒ぞろいという印象だったが、その中でも一際印象に残る傑作だったのが、10月24日に日本公開となったオリヴィエ・アサイヤスの『アクトレス〜女たちの舞台〜』だ。

 ジュリエット・ビノシュ、クリステン・スチュワート、クロエ・グレース・モレッツという、世代を超えた3人の人気女優の共演ということでも話題になっている本作は、“過ぎ行く時間”や“若さ”をテーマに、大女優が抱える心の葛藤を描いている。

 大女優マリア・エンダース(ジュリエット・ビノシュ)は、マネージャーのヴァレンティン(クリステン・スチュワート)とともに、チューリッヒへ向かっていた。マリアが新人女優だった18歳の頃に、「マローヤのヘビ」という舞台に起用してくれた劇作家ヴィルヘルム・メルヒオールの代わりに、彼の功績を讃える賞を受け取るためだ。しかし、その道中で、メルヒオールが亡くなったという知らせが届く。その悲しみを胸に抱え、授賞式に出席したマリアは、授賞式後のレセプションで新進演出家のクラウスからある作品の出演オファーを受ける。それは、『マローヤのヘビ』のリメイク作品だった。しかし、その役柄は、20年前に自身が演じた主役のジグリットではなく、ジグリットに翻弄され自殺に追い込まれる相手役のヘレナだった。ジグリット役には、19歳の人気ハリウッド女優ジョアン・エリス(クロエ・グレース・モレッツ)が決まっているという。マリアはこの役を引き受けることに決めたが、ヴァレンティンと読み合わせの稽古を行なっていく中で、ヘレナという役の理解に苦しみ、ヴァレンティンとも衝突していく…。

20151030-silsmaria_sub1.jpg(c) 2014 CG CINÉMA – PALLAS FILM – CAB PRODUCTIONS– VORTEX SUTRA – ARTE France Cinéma – ZDF/ARTE – ORANGE STUDIO – RTS RADIO TELEVISION SUISSE – SRG SSR

 これまでも女性を主人公にした作品を多く手がけてきたアサイヤス。『クリーン』では、主人公のエミリー(マギー・チャン)が歌手だったり、ビノシュとタッグを組んだ『夏時間の庭』では、名画家だった大叔父のアトリエが舞台だったりと、その中でも、“芸術”と深く関わりのある題材を描いてきた。『アクトレス』も、主人公が女優で“演劇”という芸術を描いているのだが、この題材で真っ先に頭をよぎるのが、『イルマ・ヴェップ』だ。往年の犯罪活劇映画のリメイク作の主演女優に抜擢された香港人女優と、彼女を取り巻く製作スタッフたちが織りなす人間模様を描いた『イルマ・ヴェップ』は、マギー・チャンが本人役で出演し、彼女の出演を条件にリメイク作を手がける監督レネを、ジャン=ピエール・レオが演じている。現実のチャンが映画の中でのチャンを演じ、映画の中のチャンが映画の中の映画でイルマ・ヴェップを演じるというこの構造は、『アクトレス』で、現実のビノシュが映画の中でマリアを演じ、映画の中のマリアが映画の中の舞台でヘレナを演じるのと同じく、現実と映画がオーバーラップするような、二重にも三重にも受け取れる構造なのだ。

      

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