『HUNTER×HUNTER』、今どうなってる? 複雑すぎる「第39巻」を読むために、これまでの物語を徹底解説!
※本稿では、『HUNTER×HUNTER』第38巻までの内容に触れています。同作を未読の方はご注意ください。(筆者)
冨樫義博の大ヒットコミック『HUNTER×HUNTER』(集英社)の約1年10か月ぶりとなる新刊(第39巻)が、2026年7月3日に発売された(シリーズ累計1億部突破)。
物語は、現在、謎の「暗黒大陸」に向かう超大型船(ブラックホエール1号)の中で展開しているのだが、これがなんというか、なかなか複雑で難解な様相を呈している。それはたぶん、本来の主人公であるゴン=フリークスが不在のまま、いくつもの血生臭い抗争が複雑に絡み合いながら進行しているためと思われるが、いまとなっては、この複雑さ(と登場人物の多さ)こそが、『HUNTER×HUNTER』という少年漫画の醍醐味になっている、といえなくもない。
とはいえ、だ。この約1年10か月のあいだには、“どのキャラクターがいまどうなっているのか”を忘れてしまっている読者も少なくないことだろう。そこで本稿では、あらためて、前巻(第38巻)の時点までにおける、「暗黒大陸編」(王位継承戦編)の物語を整理しておきたいと思う。新刊を読む際の参考にしていただければ幸いである。
「暗黒大陸」とは
第342話(第33巻収録)において、これまで多くの人々が「世界」だと思い込んでいた大陸群(「V5」と呼ばれる近代5大陸の代表国が統括する大陸群)が、実は広大な「暗黒大陸」の中央にある巨大湖に浮かぶ“世界の一部”に過ぎなかった、ということが判明する。
むろん、代々のV5の上層部はそのことを、遥か昔より古文書などを通じて知っていたのだが、暗黒大陸への渡航には想定外の危険がつきまとうため、約200年前に不可侵条約を締結。だが、ここに来て突然、カキン王国の国王・ナスビー=ホイコーロが、新大陸への進出を「世界」に向けて発表したのだった。
一方、ハンター協会の代表メンバー「十二支ん」を驚かせたのは、その暗黒大陸探検隊の総責任者として、国王が任命した人物が、ハンター協会の前々会長・アイザック=ネテロの息子・ビヨンド=ネテロだったことである(ビヨンドは、父親譲りの破天荒さを身に着けているのだが、ハンター協会の味方というわけではない)。
それまで禁足地だった暗黒大陸には、すでにわかっているだけでも、人類を滅ぼしかねない5つの厄災がある。しかし、その反面、現代の科学・医学を飛躍的に発展させるような鉱石、香草なども多数存在するのだという。
V5(※)の上層部は、これまでどおりの威厳を保つため、ビヨンドの監視をハンター協会に依頼(ビヨンドは面倒な軋轢や混乱を避けるためか、自らハンター協会に出向き、囚われの身となる。おそらくは大陸に到着後、すぐに逃走するつもりなのだろう)。また、一部のハンターたちは、カキン王国の王子たちの警護を担当することにもなる。
※のちにカキン王国を加え、「V6」となる。
なお、一般の移住希望者たちには、本物の暗黒大陸ではなく、旅の途中の「未開海域」に浮かぶ別の大陸のことを「新大陸」だと思わせており、ほとんどの人間はその地で船を降ろされる。
王位継承戦の現状
上記のように、ビヨンドの目的は暗黒大陸の探検であるが(実は彼は過去に一度、暗黒大陸の探検に失敗しており、今回の渡航はそのリベンジである)、ホイコーロ国王には別の思惑があった。暗黒大陸(新大陸)へと向かう旅の中で、次期国王となる人物を、14名の王子(注・女性も「王子」と呼ばれる)の中から選出しようというのだ。
ホイコーロは、14名の王子たちに対し、「壺中卵の儀」を強要。これにより、それぞれの王子たちを守る「守護霊獣」(念獣)が育(はぐく)まれる。
ちなみにこの王位継承戦、13名の王子が命を落とすまで終わらないデスゲーム(殺し合い)である。中にはそれを回避するために画策する王子(第9王子など)もいるのだが、上位の王子たちのほとんどは、自らが“次の王”になるための戦いにのめり込んでいる(余談だが、船内に用意されている棺の数が「14」であることに、大きな疑問が残る)。
なお、第38巻の時点での、それぞれの王子たちの“現状”は以下のとおり。
※再度注意。以下、王子たちの生死について触れています。(筆者)
〇第1王子……ベンジャミン[生存]最有力候補のひとり。
〇第2王子……カミーラ[生存]有力候補。
〇第3王子……チョウライ[生存]何かありそう。
〇第4王子……ツェリードニヒ[生存]有力候補。「念」(生命エネルギーを自在に操る力)を完全にマスターしつつある異分子。王位継承戦とは別に、本編のラスボスになるかもしれない怪物的存在。
〇第5王子……ツベッパ[生存]
〇第6王子……タイソン[生存]
〇第7王子……ルズールス[生存]
〇第8王子……サレサレ[死亡]
〇第9王子……ハルケンブルグ[生存]最有力候補のひとり。王位継承戦をやめさせようと、命懸けで父親に嘆願するも、それが回避不能だとわかり、覚悟を決めることに。
〇第10王子……カチョウ[死亡]ただし、彼女の守護霊獣の異能「2人セゾン(キミガイナイ)」により、生前の姿のままで、妹フウゲツを守っている。
〇第11王子……フウゲツ[生存]姉のカチョウとともに船からの脱出を試みるも失敗。現在は何ものかの呪いを受けて、衰弱している。
〇第12王子……モモゼ[死亡]
〇第13王子……マラヤーム[生存]
〇第14王子……ワブル[生存]赤子。クラピカが警護についているため、生き残る可能性は大か?
幻影旅団vsヒソカ
実は、ここまでに述べた「暗黒大陸への渡航」と「王位継承戦」だけなら、物語はさほど複雑ではない、ともいえる。しかし、未知の大陸へと向かう船内では、この王位継承をめぐるデスゲームの他に、幻影旅団とヒソカによる全面抗争も行われているため、物語はより複雑になっているのだ。
そもそも、幻影旅団のブラックホエール1号への乗船の最大の目的は、カキンの王家が船に持ち込んでいる「お宝」(三種の神器)を奪う、というものであった。しかし、仲間をすでにふたり殺しているヒソカが船に乗っているということを知った旅団は、第一の目的を「ヒソカ暗殺」に変更。船の下層で蠢(うごめ)くカキン系のマフィアとも手を組み、ヒソカの足取りを探している。
モレナの反逆
さらに話をややこしくしているのが、このカキン系のマフィアたちの存在である。船の第3層、第4層、第5層には、それぞれ順に、「エイ=イ一家」、「シュウ=ウ一家」、「シャ=ア一家」の縄張りがあり、彼らのB・W1号乗船の目的は、新大陸での各組の縄張りを決めることであった。
3大マフィアには、第4、第3、第7王子の後ろ盾があり(特に第3王子とシュウ=ウ一家組長の関係に注目)、層による“棲み分け”や、昔からの取り決めなどもあったことから、表面上は争いのない旅を続けていたのだが、あるとき、エイ=イ一家の“新組長”モレナ=プルードが暴走。ケツモチである第4王子を裏切り、異能「恋のエチュード」を感染させた組員たちを扇動し、船内での無差別大量殺人を開始する。このことにより、マフィアの世界も混乱。果たしてモレナの真意は――?
パリストン=ヒルとジン=フリークス
ハンター協会の副会長(のち会長)だったパリストン=ヒルと、ゴンの父親・ジン=フリークスは、ともに十二支んを脱退。この先は、ハンター協会ではなく、ビヨンドの側(がわ)に立って暗黒大陸探検に関わるつもりらしいが、それぞれの真意はいまだ不明である。
ちなみに、暗黒大陸の真実を記述した(と思われる)数百年前の古書――『新世界紀行』の著者の名は、「ドン=フリークス」であり、ゴンやジンとも血のつながりのある人物だと思われる。
クラピカの復讐の行方は
最後に、本編(暗黒大陸編/王位継承戦編)の事実上の主人公ともいえる、クラピカの現状について触れておきたい(冒頭で述べたとおり、本来の主人公であるゴンは、ここしばらく物語に登場してはいない)。
クルタ族最後の生き残りであるクラピカは、かつて幻影旅団によって奪われ、闇市場に放出された同胞たちの眼球(緋の目)を取り戻すため、ハンターになった(注・“犯人”は旅団ではない可能性もある)。そして、現在はノストラード・ファミリー(マフィア)の若頭になっているのだが、レオリオとともに十二支んにも加入。それは、彼がまだ取り戻していない残りの緋の目を、第4王子ツェリードニヒが所有しているのではないかという情報がもたらされたからだった(彼がB・W1号に乗り込み、王子たちの警護任務に応募したのも、すべてはこの第4王子に近づくためだった)。
なお、現在(第38巻の時点)のクラピカは、第14王子の警護を担当しながら、船内の均衡を保つために(あるいは、王位継承戦を停滞させるために)、限られた希望者に向けて「念」の講習会を行っている。
そんな彼は、「もう誰も大切な人を失いたくない」という理由から、「ひとりで戦う」という強い意志を持っているのだが、じっさいは、ゴン、レオリオ、キルア、センリツらから助けられ、また、彼も彼らを助けている。そしていままた、新たに守るべき存在が現れたことで、クラピカの中でさまざまな葛藤が生まれることになるのだが、こうした彼の「いま」と「過去」のあいだで“揺れ動く”内面描写が素晴らしい。
物語は新たなフェーズへ
以上、やや駆け足ではあったが、『HUNTER×HUNTER』(暗黒大陸編/王位継承戦編)の前巻(第38巻)までの全容(と現状)を説明した。
なお、続く第39巻では、前述の有力候補の王子たちの何名かが、命にかかわる窮地に陥ることになる。また、異端のマフィア・モレナ=プルードの壮絶な過去も明らかになる。
いずれにせよ、クルタ族の虐殺から、幻影旅団結成のきっかけとなった惨劇にいたるまで、複雑に絡み合った“それぞれの物語”は、ゆっくりとではあるが、あるおぞましい人物の悪行に集約しつつある。その悪が滅んだとき、クラピカの長く辛い旅は終わるのだろう。
[付記]本稿では、便宜上、現在進行している『HUNTER×HUNTER』のシリーズ名(編名)を、「暗黒大陸編」ないし「王位継承戦編」と書いたが、「少年ジャンプ」最新号(31号)などでは、「王位継承編」という言葉が使われている。





















