【漫画】下戸と飲むのは好き? 男女の距離感が心地よい『下戸の呑む酒』

【漫画】下戸と飲むのは好き?

 居酒屋はお酒を楽しむだけの場所ではなく、その場にいる人同士の距離感が微妙に変化する、ある意味非日常的な空間とも言える。Xに投稿された『下戸の呑む酒』では、居酒屋を舞台に、同じ会社で働く男女のいじらしさと切なさが“チャンポン”したような人間模様が描かれた作品だ。

 ついつい2人の気持ちに思いを馳せたくなる本作を手掛けた野中かをるさん(@unname0808)に、どのように制作したのかなど話しを聞いた。(望月悠木)

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『下戸の呑む酒』(野中かをる)

飲めない人のためのお酒の漫画

――今回『下戸の呑む酒』を制作した理由を教えてください。

野中:もともと商業用の企画だったのですが、ご縁のあった媒体との相性が悪く、数年間寝かせていた作品です。今回「コミティア」で新しいシリーズの漫画を描きたいと思い、寝かせていたプロットを確認していた中で、「今、一番モチベーションが高いな」と思ったネタが『下戸の呑む酒』だったんです。

――お酒を介した2人の男女の物語でしたね。

野中:そもそも、“飲めない人のためのお酒の漫画”を描きたかったんです。自分もお酒が弱いのですが、飲みの場の空気感や、お酒が好きな人と接することは楽しくて、何より憧れがありました。

――飲めないけど、ある意味“お酒”は好きなんですね。

野中:はい。以前、タバコをテーマにした漫画を商業や同人で手がけていたことがありました。いろいろな感想の中に「自分はタバコを吸えないけど、喫煙所の空気感は羨ましい」という声を何度かいただいて、「自分にとって羨ましいのはお酒だな」と思ったんです。自分のお酒が弱い経験や感情を、同じように飲めない人や、飲めない知人友人がいる酒飲みの人たちにも楽しんで、また共感してもらえたら嬉しいです。

飲める人と飲めない人の違い

――基本的に居酒屋内で繰り広げられる会話劇でしたが、ストーリーはどのように構築していきましたか?

野中:“お酒が飲めないことのデメリットあるある”から膨らませました。私自身もお酒を飲めないのに、お酒が好きな人を好きになった経験が何度かあって、その時に考えていたことや、相手が考えていそうなこと、また実際に考えていたことから、会話の内容や展開を構築しました。

――2人の会話からは、友情と恋愛の間に揺れ動く様子が面白く、いじらしかったです。

野中:下戸は素面なので、理屈っぽく自分の気持ちを抑えている様子を描いています。例えば座り方も、正面を向かずに文字通り斜に構えているのですが、それも相手に本音でちゃんと向き合えていないんですよね。納得しようとしながらも気持ちが残っているので、言葉も姿勢もどこか言い訳くさくしています。

――たしかに冷静さが目立っていましたね。

野中:一方、酒好きの麦原も横向きに座るシーンはあるのですが、椅子に足をあげたりしてリラックスしていて、同じ向きでも相手に気を許し、本音を話している、というように差別化しています。ただ、意味深なシーンでは顔の一部を隠したりもしています。どちらも体の向きや表情で心情を表しているのですが、「素面と酔っ払いでは、同じアプローチの仕方でも意味は変わるよね」と思っています。

――「下戸と飲むの、楽しい?」と下戸が聞いた後、麦原の口元を映すなど、心情をはっきり示さないシーンも多かったですね。

野中:野暮ったいことや、感情に直接訴えかけたいことなど、必要な説明が多すぎるシーンは作画で示すようにしています。ただ、基本的に読者は文字で漫画の内容を理解する傾向があって、意味のあるシーンでもセリフがないと読み飛ばされがちです。

 だから、“思わず目に止めたくなる”ように、口元など色気のあるパーツを、セリフとセリフの間を縦断できる配置にして、無意識に目に入るよう工夫しています。

――メインである下戸と麦原は、どのように作り上げましたか?

野中:「自分の作品がドラマ化したら」という想像、もとい妄想をして、「このキャラはこの俳優さんのイメージで」という感じでキャラクター造形を組むことが多いです。下戸や麦原も、そのイメージから始まり、性格や設定に合わせて詰めていきました。

――Xには前半部分が投稿されていましたが、後半ではどのような展開になっているのですか?

野中:前半では「下戸だから」で逃げていた下戸と、思わせぶりな態度を取っている麦原が、しっかりと答えを出す姿が描かれています。2人のいじらしい様子が気になった人、モヤモヤした人、自分を重ねた人には、特に見届けてほしいです。

――今後の目標や活動予定などを教えてください。

野中:現在、商業誌の新連載準備中です。お披露目はまだ先ですが、楽しみにしていただけると嬉しいです。また、『下戸の呑む酒』も次回のコミティア以降に新作を検討していますので、そちらもあわせて楽しみにしてもらえればと思います。

 まだ準備中ですが、各電子書籍ストアで『下戸の呑む酒』を配信予定ですので、ぜひ後半も読んでもらえると嬉しいです。『下戸の呑む酒』は“飲めない人のためのお酒の漫画”と思って描きましたが、今後も“誰かのための漫画”を描き続けることを目標に頑張ります。

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