『ザ・ロイヤルファミリー』『平場の月』……映像化ラッシュで注目「山本周五郎賞」 他の文芸賞との違いは?

「山本周五郎賞」 他の文芸賞との違いは?

 このところ「山本周五郎賞」受賞作の映像化ラッシュが続き、文学界だけでなく映画やテレビの世界でも注目を集めている。

 TBS系日曜劇場で放送中の『ザ・ロイヤルファミリー』は妻夫木聡が主演を務め、競馬の世界で夢を追い続ける大人たちの物語を描いた作品だ。11月16日に放送された第6話の世帯平均視聴率は10・4%を記録(ビデオリサーチ調べ、関東地区)し、初回から好調をキープし続けている。

 物語は、主人公の栗須が家族や仲間との絆を通じて困難を乗り越える様子を描き、早見和真が書いた原作小説は2020年に山本周五郎賞を受賞しているほか、JRA賞馬事文化賞も受賞しており、作品のテーマや人物描写の確かさが高く評価されている。

 一方、映画の世界でも山本周五郎賞の注目作が続々と登場している。11月には2019年に受賞した朝倉かすみの同名小説『平場の月』が映画化。妻と別れ故郷に戻った主人公・青砥健将を堺雅人、青砥の中学時代の想い人・須藤葉子を井川遥が演じる大人のラブストーリーで、公開直後から「50代に刺さる」と反応を呼び、公開初週の映画動員ランキングでは5位にランクインしている。

 さらに、2026年2月には永井紗耶子の『木挽町のあだ討ち』が主演・柄本佑、共演・渡辺謙で映画化が決定。同作は2023年に直木賞と山本周五郎賞をダブル受賞した時代小説で、江戸の芝居町で起きた事件を中心に、登場人物の感情や心理描写が緻密に描かれている。

 山本周五郎賞は大衆文学や時代小説の分野で昭和期に活躍した山本周五郎にちなみ、すぐれた物語性を有する小説・文芸書に贈られる文学賞として、1988年に創設された。主催は新潮文芸振興会、後援は新潮社で、文芸編集者からは「直木賞に次ぐ権威」とも位置づけられている。

 文学賞には他にも特徴的なものがある。芥川賞は純文学の新人作家に焦点を当て、デビュー作でも受賞可能だが、一発屋的に終わることもあり、話題作りの意味合いも強い。一方、直木賞は大衆文学を対象にし、デビュー作での受賞は極めてまれだが、受賞後も作家として活躍できるかどうかまで考慮される節があり、長く活躍する作家が多い。本屋大賞は「打倒直木賞」をスローガンに創設され、受賞作は大きな話題になるが、作家の知名度は必ずしも高くならない。しかし複数回受賞できることから、2回以上受賞すれば作家としての知名度もグンと上がる。エンタメ系の文学賞には吉川英治文学賞もあるが、こちらはベテラン作家の功績を評価する意味合いが強い。三島由紀夫賞は純文学では芥川賞に次いでメジャーとも言え、直木賞と山本周五郎賞の関係性に近いとされている。

 こうして比較すると、山本周五郎賞は「エンタメ系」という特色があることから、映像作品との親和性が高く、テレビや映画関係者の目に留まりやすい面があるのかもしれない。また、出版不況が叫ばれて久しい文芸界においても映像化はさらに売り伸ばすための大きな材料となるだけに、Win-Winな関係はさらに深まっていきそう。とりわけ、映像の世界でヒット作が続いた山本周五郎賞受賞作は取り合いになるのではないだろうか。

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