【書店のない街】図書館が書店と一体となった施設、大手取次参入で今後も増加 既存の本屋はどうなる?
■図書館と書店の棲み分けとは
地方において、図書館と書店はライバルでもあったが、基本的には共存共栄の関係にあった。地方の図書館の場合、地元の老舗書店から本を仕入れることが多かったためである。書店にとって、図書館はお得意先だったのだ。また、書店は新刊本や流行の雑誌などを扱う一方で、図書館では書店にない郷土資料や絶版図書を読むことができる。明確に棲み分けができていた。
ところが、平成以降に図書館も貸し出し冊数を競うようになりはじめると、ベストセラー小説など、人気の本を何冊も入れるようになった。これに対し、民業圧迫だと反発の声を上げる書店もあった。しかし、現在は書店そのものが自治体から消滅してしまうケースも増えており、改めて図書館と書店の存在意義とは何なのか、考えさせられる機会が増えている。
図書館は地方において、日常的に人が集まる公共施設である。筆者は地方に出張した際に、調べ物をするために図書館に立ち寄ることが多い。どんな小さな自治体であっても、平日でも図書館には一定の人がいる。近年は大規模な図書館を郊外に建設する例が多いが、図書館が市街地にあると、それだけで人の流れを生み出していることがわかる。
■出版取次大手が続々事業化を進める
そんな図書館と書店の機能を一体にして、集客しようという試みはこれまでにもあった。有名な例は、佐賀県武雄市の「武雄市図書館」だろう。カルチュア・コンビニエンス・クラブを図書館の指定管理者とする一方で、館内には蔦屋書店も設置されたため、新刊や文房具などを買うこともできた。スターバックスもある開かれた図書館として、全国から観光客が訪れる名所となった。
図書館と書店を一体化する事業に、取次も本格的に乗り出した。山口県田布施町は、出版取次大手のトーハンと「あの本が手に届くまちづくり連携協定」を締結。本を注文し、購入できる図書館を開設する計画という。また、トーハンと並ぶ出版取次大手の日販も同様の事業を各地で展開するという報道もあり、今後、取次同士の競争も起こるかもしれない。
図書館を改築する際、歴史資料館を併設するといった具合に、複合的な文化施設として建築する動きも盛んになっている。図書館と書店が融合した施設が各地に誕生すれば、書店消滅の問題が解消できるだけでなく、中心市街地の活性化を図ることもできるかもしれない。図書館の役割はますます高まっていきそうであり、地域の核となる公共施設になっていく可能性が高そうだ。