『ダンダダン』『呪術廻戦』も実は……? “ネット怪談”の遺伝子を受け継ぐホラー漫画が大流行
ここ数年、新世代のホラー漫画がブームを巻き起こしている。いわゆる“ネット怪談”のエッセンスを盛り込んだ作品が各所で人気を博しているのだ。今回は、このムーブメントを象徴するようなタイトルをいくつか取り上げていきたい。
まず前提としてネット怪談とは何かというと、その名の通りインターネットで誕生し、拡散されていった怪談を指す。有名どころでいえば、きさらぎ駅やくねくね、八尺様などはほとんどの人が耳にしたことがあるのではないだろうか。そうした話を盛り込んだ創作も盛んに行われており、たとえばコミカライズ化、アニメ化もされた宮澤伊織の小説『裏世界ピクニック』はネット怪談を直接題材とした作品だ。
その一方、ネット怪談の要素はより広い範囲に拡散しており、昨今のホラー系漫画は多かれ少なかれ影響関係にあるように見える。10月からTVアニメが放送されている『少年ジャンプ+』連載の『ダンダダン』は、その筆頭といえるだろう。
同作に登場する“怪異”の数々は、実在の都市伝説などをモチーフとしているが、その中にはネット発の怪談も含まれている。たとえば「アクロバティックさらさら」は、2008年にネット掲示板に書き込まれた「アクロバティックサラサラ」、通称“悪皿”の怪談が起源となっている。
また「カシマレイコ」については、同名の都市伝説が古くから存在しているが、『ダンダダン』の場合にはそこにネット怪談「八尺様」の要素を付け加えているのが特徴だ。たんに元ネタとして使用するだけでなく、作品の世界観に合うように上手くアレンジしているため、ネット怪談の“サンプリング”とでも呼べるかもしれない。
その一方、田口翔太郎が手掛けるオムニバス形式のホラー漫画『裏バイト:逃亡禁止』も、サンプリング的な手法が見られる。とある話では、同じ顔の男が複数人の夢に現れるという海外のネット怪談「This man」を題材としつつ、独自の味付けによってそれをオリジナルな物語に昇華していた。
さらにそれだけでなく、ネット怪談の“形式”を活用しているのが同作の秀逸さ。一般人がバイトという日常の延長を通じて怪異と出会う過程を淡々と綴る描写や、多様な世界観が入り混じるごった煮感は、2ch(現5ch)の怪談スレッド「死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?」、通称「洒落怖」の系譜を感じさせる。
同作では、主人公たちが怪異を撃退した……と一安心した後、より酷い悲劇が待っていることを暗示させる不気味な描写で締めるというオチも多いが、これも「洒落怖」作品によく見られる特徴だ。