漫画家アシスタント不足問題ーーアナログ画だけでなくデジタルでも「リモートでは教育が難しい」代替案は?
■アナログ・デジタルに限らず「漫画家のアシスタント探し」が困難に?
先日、アニメ化もされたヒット作『最遊記』シリーズで知られる漫画家・峰倉かずやのXのポストが話題になった。アナログで作業ができるアシスタントを急募するというものである。峰倉は漫画の原稿をすべて従来通りの手描き、すなわちアナログで仕上げているが、現在、漫画家の多くがデジタルに移行。そのため、アナログで作業ができるアシスタントを探すのはかなり難しくなっているのが現状である。
【急募】
時代的に難しい事は承知ですが、アナログ原稿の作画アシスタントさんを切実に募集中です。
背景が描ける方は滅茶苦茶助かるのですが、トーン作業経験のみの方も大歓迎です…!
(人手がなさすぎて今回背景以外の全トーンを私と事務員さんで貼ってるので)
ぜひ一迅社までお問い合わせ下さい🙏 https://t.co/97pmNErI2a pic.twitter.com/3am9dFxHAm— 峰倉かずや (@kaz_minekura) September 28, 2024
ところが、である。デジタルはデジタルで、アシスタント探しに苦戦している漫画家が多いというのだ。その要因のひとつに、発表される漫画の量が増えている影響で、アシスタントが不足していることが挙げられる。さらに言えば“実力の高いアシスタント”に関しては、慢性的に不足している状態にあるという。
具体的なデータがあるわけではないが、漫画の制作本数は過去最高レベルに増えているという指摘もある。WEBコミックが好評で、ヒットを飛ばしているためだ。紙の本や雑誌は苦境であるが、電子書籍は伸びている。メディアミックスの広がりに伴い、従来の出版社以外のIT系の企業など異業種からの漫画への参入が相次いでいる。こうした漫画の需要に伴う漫画家の増加に対し、それを支えるアシスタントの数が不足しているのだ。
■コロナの自粛ムードによる「リモート化」が尾を引いている
従来、アシスタント探しは出版社の編集者が手伝ってくれるのが普通だった。「週刊少年ジャンプ」などの漫画雑誌で「アシスタント募集!」という告知を見たことがある人も多いだろう。大手出版社は、売れっ子の漫画家のもとに新人をアシスタントに行かせるのは、新人の育成のために重要だと考えている。ところが、漫画制作のノウハウがない新規参入の企業は、アシスタント探しもすべて漫画家に丸投げしている例もあると聞く。
そのため、漫画家のなかには、SNSでアシスタントを募るか、マッチングサービスを利用したり、はたまた専門学校時代の友人に頼んだりする例もあるという。ただ、WEBコミックは特にそうなのだが、現代の漫画は美麗かつ緻密な絵が求められ、作画に手間がかかる。にもかからず、肝心のアシスタントの技能が十分ではなく、依頼しても理想通りの絵が上がってこないこともあるという。いったいなぜ、そんなことが起きてしまうのか。ベテラン漫画家のA氏はこう推測する。
「アシスタントが十分に育っていないからです。3年以上に及んだコロナ禍で、リモート形式でアシスタントを行うことが一般的になりました。一昔前のアシスタントといえば、漫画家の仕事場に通って集団で作業し、“お金をもらいながら学ぶ”のが普通でした。それが、コロナの自粛ムードのなかでリモート化が一気に進み、対面で技術を教え合うことができなくなり、アシスタントの技術が低下していると考えられます」