『寄生獣』に負けない傑作と話題 実写ドラマ配信が迫る岩明均原作漫画『七夕の国』の見どころは?

『寄生獣』とのテーマ性の違いは?

 「地球上の誰かがふと思った 『人類の数が半分になったら いくつの森が焼かれずにすむだろうか……』」。『寄生獣』の冒頭で描かれる、あまりに有名なフレーズだ。同作はこの言葉に象徴されるように、人類を“地球の敵”として描き出すという画期的かつ野心的な作品だった。

  ある日突然地球外から飛来した謎の生き物が人間たちに寄生し、2つの種による壮絶な生存競争が繰り広げられる……というのが大まかな『寄生獣』のストーリーだが、そこには人間と自然との対立や、“異なるもの”との共生の可能性という現代的なテーマがいくつも詰め込まれていた。

  だからこそ『寄生獣』は今でも傑作として高く評価されているわけだが、そのテーマ性と比べると、『七夕の国』はやや射程が短いように感じるかもしれない。しかしそうした見方は必ずしも正しくないだろう。たしかに人類という大きなスケールの話ではないものの、“共同体”をめぐる深い思索に満ちているからだ。

 『七夕の国』の主人公はナン丸だが、物語の軸となるのは「丸神の里」という共同体に生きる人々。作中で起きる事件は、彼らの信仰心と結びついており、伝統文化に縛られて悩む人の姿も描かれている。いわば独自の文化を築き上げた共同体が“敵”の立ち位置となっている。

  しかし敵と味方の対立では終わらないのが、漫画家・岩明均の真骨頂。共同体をただ否定するのではなく、正面からとことん向き合った上で、対立を乗り越えた先に広がる景色を見せてくれる。だからこそ、現代の読者にも響く普遍的な物語になっているのではないだろうか。

  ちなみに実写ドラマ版では主人公のナン丸役を細田佳央太が演じるほか、藤野涼子や上杉柊平、山田孝之などの出演が発表されている。岩明の“もう1つの代表作”をいかにして実写化してくれるのか、公開の日を楽しみに待ちたい。

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