『シティーハンター』Get Wildに乗せて聴きたい、冴羽獠のハードボイルドすぎる名セリフ

『シティハンター』冴羽獠の名台詞

 Netflixで実写映画が公開され、話題となっている名作漫画『シティーハンター』。その魅力といえば、冴羽獠が槇村香との日常で見せるコミカルな一面と、銃撃シーンでの仕事人的な一面のギャップ。そして、冴羽とそれを取り巻くキャラクターたちの濃密な人間ドラマも見逃せない。

 特にTVアニメ版では、各話のエンディングで獠や香のセリフに合わせて名曲『Get Wild』が流れるのがお馴染みの構成になっており、「Get Wild退勤」などの言葉が生まれるきっかけとなった。本稿では、漫画版のセリフの中から、Get Wildと合わせて聴きたいポエミーな名台詞をピックアップして紹介する。

「あいつはおたくが手を汚すほどの値打ちもない‼︎
 だからこそおれのような男がいるのさ」

 アニメ版では、香が相棒になって以降のエピソードが大半を占めるが、作品のハードボイルドな魅力や、冴羽たちが住む新宿という街のシリアスさを濃密に表現しているのは、むしろそれ以前のエピソードだ。

 例えば、夜の新宿歌舞伎町を舞台に起きた少女の無差別殺人事件を追う「BMWの悪魔」というエピソード。妹を殺された女性から依頼を受けた冴羽は、毎夜快楽殺人を繰り返す犯人の車が黒いBMWであることを特定。脅迫文章を書いたメッセージカードや、情報屋にあえて捜査情報を拡散させるなどして、犯人を徐々に追い詰めていく。憔悴した犯人が依頼人を襲ったところで、男に被害女性の人数分のクロスボウの矢を打ち込み、生き地獄のような痛みと苦しみを与えるのだ。

 クライマックスは、冴羽たちを殺そうと車を急発進させた犯人の額に銃弾を撃ち込み、BMWがオイル缶にそのまま突っ込んで車ごと炎上するシーン。妹の復讐を自ら遂げようとする依頼人を制し、かわりに犯人を殺した冴羽が「あいつはおたくが手を汚すほどの値打ちもない‼︎ だからこそおれのような男がいるのさ」とキメ台詞を言いながら空になった拳銃を炎の中に放るのだが、このシーンがまさに洋画の中で描かれる殺し屋という風情でカッコイイのである。このエピソードはアニメ版でも放送されているが、新宿で様々な汚れ仕事を引き受けるスイーパーであることを明言するこのセリフは、まさにシティーハンター・冴羽獠を表すセリフと言える。

「また死にたくなったら呼んでくれ
 女性へのアフターサービスは万全なんだ」

 『シティーハンター』には、今の時代ではコンプライアンス的に敬遠されてしまうような描写やセリフも多数描かれている。冴羽が、芸能事務所社長からの依頼で人気女優・佐藤由美子のボディガードを引き受ける「裸足の女優」の回は、特に少年誌としてはドキドキするシーンやセリフが多い。

 作中、女優・由美子は映画撮影中に何者かから幾度となく命を狙われるのだが、冴羽は狙われても泣いたり脅えたりしない彼女に次第に違和感を持ちはじめる。それもそのはず、実は、恋人を亡くし自殺願望が抱える彼女が自分を殺させるために殺し屋を雇い、それを阻止したい事務所社長が冴羽を雇った、というのがこの物語の真相だったのだ。ちなみに、彼女が雇った殺し屋は海坊主で、冴羽と彼との緊迫の対決シーンも本作の見どころとなっている。

 人気女優の命を狙う犯人が彼女に雇われた海坊主だと分かった冴羽は、彼女の自殺願望を止めるために海坊主を買収し、亡くなった恋人への未練を断ち切らせるある作戦を実行する。「また死にたくなったら呼んでくれ、女性へのアフターサービスは万全なんだ」ラストシーンにこんなキザなセリフを吐いて許されるのは、数ある少年誌ヒーローの中でも冴羽獠だけだろう。

 漫画ではこれ以外にも「都会のシンデレラ」や「指輪に秘めた夢」など、香に関するエピソードでの名台詞が多い。Netflix版も良いが、名曲『Get Wild』をかけながら、ぜひ今一度原作も読み返してみては?

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