人気バトル漫画と都市伝説『ダンダダン』『地獄先生ぬ~べ~』……怪異との闘いはどう描かれている?

■人間が怪異に対して無力となる

  そういった例の中、長く続いている都市伝説物で数少ない「人間が怪異に対して無力」な例が『裏バイト:逃亡禁止』である。ダブル主人公の一人である黒嶺ユメが持っている武器は危機を察知する能力(危険を匂いとして感じることができる)だけで、「危機を察知して逃げる」以外の手段がない。

  同作は「きさらぎ駅」や「くねくね」といったネットロアの典型例は登場せず、ネットのオカルト掲示板に掲載されていそうな奇妙な現象が一話完結形式で描かれる。実際に語られている都市伝説を「モチーフにした」都市伝説ものといったところだろうか。アニメシリーズ『妄想代理人』も同種のものと言える。『妄想代理人』で語られる都市伝説「少年バット」は同作のオリジナル怪異で、金色のローラーブレードを履いて赤い帽子を深く被った少年の姿をしており、鈍器(折れ曲がった金属バット)を持っている。「腕章の少年」という都市伝説で語られる怪異がいるが、腕章の少年は片足が義足でナチスの腕章をつけており鈍器(警棒)を持っている。なんとなく少年バットとイメージが重なる。

  都市伝説でも特にネットロアにみられる特徴だが、怪奇現象の正体は最後まで不明のままであることが少なくない。対称的なのがイギリスの怪談話で、イギリスでは幽霊屋敷は「それだけ格式や歴史のある場所である」とのお墨付きがつく伝統がある。イギリスの歴史のあるパブや劇場にはたいてい幽霊話が一つか二つは転がっている。幽霊出現スポットを巡るウォーキングツアーも各都市で開催されており、筆者もかつて古都オックスフォードで開催されたツアーに参加したことがある。

  筆者の英語力は完璧に遠いため、すべてを理解できたわけではないが、そういった幽霊スポットの幽霊は「いつの時代の誰々(馬など動物の幽霊が出る場合もある)」とたいてい由来がはっきりしている。それに対して日本の都市伝説に登場する現代怪異は正体不明であることが少なくない。くねくねなどその代表例であり、ネットロアで語られる怪談話にくねくねの具体的な正体は語られない。『裏バイト:逃亡禁止』も怪奇現象の正体がはっきり語られないことが少なくない。そういった意味で『裏バイト:逃亡禁止』は正しく現代都市伝説ものであると言えるだろう。

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