『怪獣8号』アニメで高まる“原作の解像度”ーー肉付けされたアニメオリジナルの描写を考察
松本直也による『怪獣8号』のアニメが、4月13日にスタート。Production I.Gによる躍動感溢れる作画演出やスタジオカラーによる緻密な怪獣デザイン&色彩の巧みさで、本作の世界観がよりスケールアップされたものになっている。まるで映画のような完成度に、原作ファンのみならずアニメから入った視聴者からも驚きの声が多く寄せられた。
本作のストーリーは原作に寄り添われた形で進んでいくが、ところどころキラリと光るのが原作のシーンを補完するようなアニメオリジナル描写の存在だ。そこで本稿では、原作の解像度を上げたアニオリ描写について探っていきたい。
怪獣専門清掃業者時代の描写の厚み
何の変哲もない日常が描かれたと思えば、用水路から突如として怪獣が発生、道は崩れ、緊急怪獣警報が鳴り響き、地下避難所へ駆け込む人々。第1話冒頭からアニメオリジナル描写がふんだんに盛り込まれ、災害としての怪獣の恐ろしさ、その光景が決して非日常ではないという異常さが演出されていた。こうした肉付け要素は怪獣の禍々しさを色濃く伝えるだけでなく、原作のシーンを深堀するような役目も。それが顕著に表れているのが、怪獣専門清掃業のカットだ。
日本防衛隊員を目指すも志半ばで夢破れたカフカは、討伐された怪獣の死骸の処理や、血液で汚れた街の清掃を行う怪獣専門清掃業で働いていた。怪獣を解体し処理する作業は、その特性から臓物の扱い方までさまざまな知識が必要。このとき培った知識が、のちに受験する防衛隊員試験でも大いに役立っていく。
重機による大規模な清掃や巨大怪獣を足場にしながらの高所作業、チェーンソーを用いた血飛沫をあげながらの解体処理など、アニメオリジナル描写が加えられたことで清掃員たちの途方もないハードな仕事ぶりが浮き彫りになった。さらに怪獣の仕組みを映し出すタブレットや解体をサポートするドローンのようなアイテムも付け足され、合理的に作業が進められている様子が伺える。カフカ自身の夢ということもあり衛隊の活躍がフォーカスされやすいが、実は清掃業も“日の当たらない怪獣との戦い”を担う重要な仕事。そんな“影のヒーロー”への敬意を表すかのように、肉付けされたオリジナル描写は清掃員時代の解像度をぐっと高めるものになっていた。