「TIME」誌「世界の100人特集」宮崎駿、上野千鶴子の他に日本人科学者2人選出 今後に続く注目の教授は?
■恒例の世界の100人特集日本人が選出
毎年恒例となっているアメリカの雑誌「タイム」の「世界の100人」に、アニメーション映画監督の宮﨑駿氏、社会学者の上野千鶴子氏、大阪大学の林克彦教授、アメリカのエール大学の岩崎明子教授の合計4人の日本人が選ばれた。
注目度の高さでは、『君たちはどう生きるか』の制作を機に様々な賞の受賞ラッシュとなっている宮﨑氏。祝福するコメントがネットに多数投稿されている。上野氏は、女性差別などに焦点を当てた著書が中国でベストセラーになっているという。
そして、科学者の2人、林教授、岩崎教授の業績にもフォーカスしてみよう。海外での評価がなぜ高いのだろうか。
生殖生物学者の林教授は、大阪大学医学系研究科・医学部で教授を務めている。大阪大学のサイトによると、林教授の研究グループはオスのマウスのiPS細胞から卵子を作り、子どもを誕生させることに世界で初めて成功した。この業績が評価され、2023年にはイギリスの科学誌「ネイチャー」の「今年の10人」に選ばれている。
林教授の研究成果は、絶滅の危機に瀕している動物の種を救ううえで、役立つ可能性がある偉業と高く評価されている。こうした数々の研究での業績が、今回の選出につながったといえる。
免疫学者の岩崎教授は、日本の高校を中退後、カナダ・トロント高校に転校し、トロント大学で免疫学を学んだ。現在はエール大学で教授を務める。新型コロナウイルス感染症が蔓延すると、岩崎教授は治療法の研究を推進し、パンデミックの期間中は科学的な観点から情報発信にも努めた気鋭の研究者である。
今回、日本人4人が多岐にわたる分野から選出されており、日本の芸術・科学分野の底力を感じさせてくれる快挙となった。しばし、日本の科学技術についてはノーベル賞受賞者が決定するたびに、「研究費が少なくなっている」「今後、受賞者は減少するのではないか」と今後を嘆く声が上がることが多い。
もちろん、そうした数々の問題は解決されるべきであるが、世界に注目される日本人がいることは素直に誇らしいことだ。今回の林教授、岩崎教授の選出を前向きに喜びたいものである。
なお、将来ノーベル賞を受賞するのではないかと名前が挙げられる日本人は、多数存在する。文学賞の村上春樹はもはや毎年の出版界の最大関心事となっているが、生理学・医学賞は坂口志文や遠藤章、化学賞は藤嶋昭、物理学賞は十倉好紀が毎年候補に挙げられている。今年も10月からノーベル賞の発表が始まるが、日本人の受賞はあるだろうか。