【話題作試し読み】バツイチ・無職のおっさんが再びヒーローに! 『元最強勇者の再就職』は“経験”が武器の熱き再生物語

【漫画】『元最強勇者の再就職』第1話&インタビュー

 若い頃は「最強の勇者」だったダン。しかし、ダラダラした生活を送ってきたツケが回って、今では「バツイチ・無職のおっさん」になっていた。生活のためにクエストで金を稼ごうとするが、勇者の面影もなく、最初は目を輝かせていたパーティーメンバーにも「ザコ」扱いされる始末。そんな彼に声をかけたのは、銀髪エルフでイケメン&Sランクの冒険者という、超ハイスペックな若者でーー。

 人気漫画配信サイト「コミプレ」が展開する、コミックレーベル「わいるどヒーローズ」で好評連載中の『元最強勇者の再就職』(原作:阿久津拓矩/作画:萩尾ノブト)は、落ちぶれてしまった元勇者・ダンが再び歴史の表舞台でのし上がっていく、痛快な異世界ファンタジーだ。彼の武器は、チートスキルでも伝説の剣でもなく、誰よりも血を流して獲得してきた“経験”。魔法の力で効率的に戦う若者たちとは対照的な泥くさい武器だが、それこそが元最強勇者たる所以であり、読者の心を鷲掴みにするカッコよさにつながっている。

 多くの人の共感を呼ぶ、この愛すべき勇者はどのようにして生まれたのか。原作者の阿久津拓矩先生、作画を担当する萩尾ノブト先生にじっくり話を聞いた。(編集部)

『元最強勇者の再就職』第1話を試し読み(続きを読むには画像をクリック)


©阿久津拓矩 萩尾ノブト / ヒーローズ

ーーかつて最強勇者だった男が(一見)“ダメなおっさん”になり、時代の変化に翻弄されながらも、彼を信頼する仲間と「経験」をもとに再び歴史の表舞台に出ていく……という、丁寧でワクワク感のある物語です。原作の着想から教えてください。

阿久津:「レベル30で魔王を倒した勇者が、レベル100の世界に放り込まれたどうなるのか?」という問いがこの物語のスタートでした。戦い方も変わってしまい、すっかり終わってしまった勇者が、この世界でどうやったら再び冒険者としてやっていけるようになるのか、と考えた時に出てきた武器が、「魔法」という便利な力を手に入れたことで見向きもされなくなった「冒険者たちの経験」でした。

ーー突然手に入れたチートスキルではなく、地に足のついた経験というところに共感する読者が多そうです。萩尾先生は、最初に原作に触れてどう思いましたか。

萩尾:1話目の原作を読んだ感想は、「ダンは自分と同じだ」です。僕もかつてはマンガ家としてそこそこ活躍していたのですが、今活躍している若手の作家さんと比べるとすっかり時代遅れです。昔の自分の成功体験を元にしたやり方だけではダメだ、今の時代に合わせて自身をアップデートさせていかなくてはいけない、というのは僕も思うところではありました。だから、「ダンは自分と同じだ」と思ったんです。でもこの感想は僕だけではなく、きっと世の中の年配者の方も同じなのではないでしょうか。

 昔自分が経験してきたやり方では今の若い子には指導できないとか、コンプライアンスの意識をアップデートしていかなくてはいけないとか、年配者の多くの方が時代の変化に翻弄されていると思うので、きっと同じようにダンに感情移入してしまうと思います。

ーーダンはこれまで人気を博してきた“おっさん”系主人公の中でも非常に人間味があり、いい意味でダメさと有能さの両面性を備えた、共感性も高いキャラクターだと思います。阿久津先生は彼をどう造形し、その魅力をどう捉えているでしょうか。

阿久津:実はダンのような人はたくさんいると思っています。決していい人でないし、だらしなかったり、ダメだったりするけど、どこか憎めない愛嬌のあるおっさん。そんな近くにいそうなおっさんの親近感が、ダンの魅力だと思います。

ーー萩尾先生はそんなダンを描く際に、どんなことをポイントにしていますか。

萩尾:動きと表情ですね。みっともなかったりかっこよかったりするキャラクターなので、そこを表現できるようにダンの動きと表情はいつも気にして描いています。

ーー作中の“現代”において最強格の実力を持ちながら、ダンを慕うS級冒険者・アンバーも素敵なキャラクターです。

阿久津:「元最強の今ダメ勇者」とバディを組む相手として、どんなキャラがいいのかを考えました。「古い冒険者の象徴」であるダンに対して、「新しい冒険者の象徴」。「だらしないおっさん」に対して、「かっこいい若者」。「ダメ勇者」に対して「理想の冒険者」。など、ダンと対象になるキャラクターを考えていった結果生まれたのが、アンバーです。

萩尾:大げさに感情を表現しないキャラクターですけど、アンバーもカワイイところがあるんですよね。なので、クールさの中にもちゃんと愛嬌もあるんだよ、というのを表現できるように気をつけて描いています。

ーーゼノビア、マドルンのような女性キャラも含めて、主要キャラクターはそれぞれに個性的です。ダンを除いてお気に入りのキャラクター、また描いていて楽しいキャラクターを挙げていただくとすると?

阿久津:一人あげるなら、バーローブルしょうか。バーローブルはアンバーのライバルで嫌味な強キャラのはずでした。ですが、気付けばアンバーと友人になりたい気のいい男になっています。今後、さらに想定外の方向に動いてくれるのでは? という意味でお気に入りキャラクターの一人です。

萩尾:みんなお気に入りなので難しいですが、一番はゼノビアですね。短絡的で感情の起伏が激しいので、表情がコロコロ変わるとても魅力的なキャラクターだと思います。

 描いていて楽しいキャラクターはいっぱいいて、受付嬢やフォグ公爵や名もないモブとかまで楽しんで描いています。表情が豊かなキャラクターを描くのが好きなので、強いて挙げればダンとゼノビアですね。

ーー魔法が使えないなら地図を描けばいい……のように、最新の技術(魔法)が使えない時に頼りになる「おっさんの経験」がうまく生かされており、ダンが徐々に頼りになる存在として輝いていく姿が痛快です。「かつて最強だった能力を取り戻して無双する」というような簡単な展開になっていないことが本作の大きな魅力と感じるのですが、「再就職」という立場の元勇者を描く上で、物語上注意していることはありますか。

阿久津:ダンはレベル30でレベル100の世界に放り込まれてしまったので、パーティーの中どころか、現代の冒険者の中でもかなり下の方の実力しかありません。その中で、どうやったら現代のトップレベルの冒険者に食らいついていけるのか? どうやったらダンらしく活躍させてあげられるのか? を注意するようにしています。

ーー「魔法」と「武器」が別の戦術として明確に分かれていること、それぞれに力量の差が大きいこともあり、バトルの描写はなかなか難易度が高いのではと想像しました。迫力のある作画が魅力的ですが、萩尾先生は本作の戦闘シーンの描写についてどう考えていますか。

萩尾:武器を使う時も魔法を使う時も戦闘シーンは位置関係もあり動きが激しいので、毎回自身の技術不足を痛感しながら描いています。魔法はやはりド派手なエフェクトがあるとカッコいいと思うのでエフェクトを、武器での攻撃はちゃんと力が乗った動きを表現できるかを意識しています。多分これからも多くの戦闘シーンを描くことになると思うので、読者の皆さんに満足してもらえるシーンを描けるよう、これからもっともっと精進していくつもりです。

ーー連載を追いかけているファン、そしてこのインタビューで第一話を読み、これから作品の世界に入っていくファンのそれぞれに、メッセージをお願いいたします!

阿久津:連載を追いかけてくださっている方も、このインタビューで『元最強勇者の再就職』を知っていただいた方も読んでくださりありがとうございます! もっともっと面白くなるよう頑張りますので、応援よろしくお願いします!

萩尾:すでに作品を読んでくれている方、この記事をきっかけに1話目を読んでくれた方、どちらも本当にありがとうございます! これからも魅力的なキャラクターたちによる熱く楽しい物語が続いていきますので、これからもどうぞよろしくお願い致します!

◆『元最強勇者の再就職』
https://viewer.heros-web.com/episode/3269754496827919671

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