【漫画】対話型AIは“生きづらさ”にどう寄り添う? 人生の儚い輝きを感じるSNS漫画『私の先輩』
感覚を重視して描いた作品
――今回『私の先輩』を制作した背景は?
Siena:利用していたメンタルヘルスアプリに、AI系の機能が導入されたことがキッカケです。そこから展開から肉付けまで何もかも、感覚と流れに任せてストーリーを作成しました。言い換えれば「ただ自分の中にあるものを素直に描きたかった」という感じです。
――明石と先輩も感覚を重視して誕生したキャラということですか?
Siena:はい。描きながら微調整した部分もありますが、自分の中で求めているものを漠然と入れた感じになりました。
――「職場のおばさんはネガティブな話を頻繁にしている」など、明石の送っている日常がリアルに描かれていました。
Siena:本作の日常についても、「ただ純粋に自分の中の描くべきことを描こう」としたらこうなりました。「リアルに描こう」とこだわって描いたわけではありません。
――明石が起きた時に「…ふぁるほほ」、明石がたい焼きを食べている時に「…ほふでふね」と言っていますが、こういった何気ないセリフも感覚的を重視して選んだのですか?
Siena:そうかもしれません。いわゆるエンタメとしての日常感というよりは、自分の中のしっくりくるセリフを抽出した結果、こういったセリフを採用しました。
遺言みたいな作品
――明石の「長生きしたいけど楽に死にたい」という感情が繊細に表現されていました。
Siena:正直「こういった感情を描いて良いのか」ということは迷いました。ただ、この物語は自分にとってある種、ネガティブな意味ではなく“現状の遺言”みたいな側面があります。ですので、「描けるだけ描いちゃおう」という思いから描きました。
――「君は全力で生きてきたと私は思っているよ」という言葉をはじめ、先輩のセリフはどれも印象的でした。先輩のセリフはどのように決めましたか?
Siena:セリフはできる限り感覚で決めました。また、私自身「誰でも全力で生きている」「生きてきた」と思っているから、「君は全力で生きてきたと私は思っているよ」というセリフが生まれたのかもしれません。
――ラストに対話型AIから「君がどんな風に生きて、あるいはどんなふうに終わるとしても見守っているよ」と言われた時、明石は乾いた笑い声を発して、「…ありがとうございます」と口にしていました。ラストの明石の心情はどのようなイメージで描いたのですか?
Siena:私自身、明石がなぜあの表情を浮かべ、あのような言葉を口にしたのかよくわかっていません。ただ、そういう“よくわからなさ”を描くことが必要だと判断したのかもしれません。
――最後に今後の漫画制作における目標などあれば教えてください。
Siena:正直言いますと、「本作を区切りにして、またちゃんとイラストを描いていかなきゃ…」と思いながら描いてました。ただ、描きたい物語はまだいくつかあります。「多分また新しく何かを描きたくもなるし、衝動で描いてしまうこともあるし…」という感じなので、必要性が自分の中で生じたら描きたいとは思っています。