『葬送のフリーレン』次々に明かされる勇者ヒンメルの英雄譚 2023年の覇権アニメは原作の連載にこそ注目

『葬送のフリーレン』ヒンメルの英雄譚

※本稿は『葬送のフリーレン』最新話の内容に触れています。未読の方はご注意ください。

 2023年9月より放送を開始し、迎えた新年も引き続き話題のアニメ『葬送のフリーレン』。原作は「週刊少年サンデー」にて連載中で、2023年12月27日発売の合併号に同年最後となる「第120話」が掲載された。

 『葬送のフリーレン』は、勇者一行が魔王を打倒するという“大きな物語”のエンディングからスタートする、異色のファンタジー作品。本来なら主人公になりそうな「勇者」のヒンメルはすでに他界しているが、悠久の時を生きるエルフのフリーレンにとって“ほんのひととき”である10年の旅で、彼女に多大な影響を与えており、原作の連載100回を記念して行われた人気投票では第1位に輝いている。

 そんなヒンメルだが、「勇者」らしい勇ましい姿はこれまであまり描かれてこなかった。しかし、最新の展開で大魔族と戦闘が描かれ、その強さの一端が明らかに。そして120話では、魔族の影響を強く受けていた北方の帝国領で、ヒンメルの英雄譚がどう語られているかが描かれており、ヒンメルを推すファンは誇らしい気持ちになったかもしれない。

 詳細なネタバレは控えるが、帝国領ではどうやら、ヒンメルの勇姿がかなり誇張して語り継がれているらしい。生前の彼がその“イケメンぶり”を再現することにこだわった銅像は、本人に似ているとは言い難い、筋骨隆々の戦士になっている。

 その偉業が大きなものであるほど、伝聞では実像と離れた物語=伝説になっていくもの。『葬送のフリーレン』が面白いのは、フリーレンが語り部となり、読者に真実を伝えてくれることだ。ヒンメルは伝説ほど勇ましい人物ではなく、過大な評価を受けることは好まないタイプに見えるが、それでも真実は自分たちの中にあれば十分だと考え、人々の賑わいに水をさすようなことはしなかった。当初は真実が歪められることに嫌悪感を示していたフリーレンも、いまはヒンメルの勇姿を讃える祭りを楽しむようになっている。

 ヒンメルはやはり、「魔物を撃ち倒す勇ましい者」というより、「人々を明るく勇気づける者」という意味で”勇者”という言葉がピッタリで、フリーレンは人間をより深く知るための旅の中で、そんな姿にあらためて惹かれていっているのだろう。

 原作『葬送のフリーレン』は、「○○編」と括れるような大きなエピソードを除けば、どこから読んでも楽しめる物語であり、むしろ大きな展開のない“日常回”こそ本領と言える。厳さは帝国領に舞台が移り、一般市民目線でのヒンメルの英雄譚もさらに語られるはずで、アニメ派のファンも連載を追いかけておくと、彼の魅力をさらに深く知った状態で、放送を楽しむことができるだろう。まだ120話なので、年始の休みを使って追いついてみてはいかがだろう。

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