【漫画】修学旅行の帰り道、深夜高速バスでロマンス? 懐かしくも新鮮な恋愛漫画『深夜高速にふたり』に反響

――投稿から4日ほどで9.4万を超えるいいねが集まっています。

乙川灯(以下、乙川):ここまで反響をいただくことはなかったので驚いています。1年前の「コミティア」で既に発表していた作品だったこともあり、素直にびっくりしました。ありがたいことにフォロワーさんも6000人くらい増えて。

――なぜ改めてXに投稿されたのでしょう?

乙川:発表して1年経ったら無料で公開しようとは考えていて、今はちょうど仕事が少ない時期だったので思い付きで公開したんです。

――着想された時のことは覚えていらっしゃいますか。

乙川:アイデアを得たのは大学時代にサークルの冬合宿で夜行バスを利用した時でした。乗りこんだ時はみんなでワイワイ話していたのに疲れ果てたのか、静まり返ってしまって。その空気感や窓の外の遠くにある光など、その雰囲気が印象に残ったんです。

 さらにここに同じ気持ちを共有できる人がいる、という漫画にしたら面白そうだなと。実体験としては誰か相手がいた訳ではなく、ひとりでぼうっとしていただけでした(笑)。

――物語の展開については?

乙川:遠くの街の光に憧れる気持ちがあるということは、そういう場所にいない子たちだなと。だから主人公は地方に暮らしている子たち、でもいわゆる「上京物語」に落とし込むのは少し抵抗があったので、型にはめるというよりは、彼らの土地に根差す生活や日々の違和感を掬ってあげられたらと思いました。

 今はネットもあって地方に住んでいる学生もメインストリームな流行文化に触れているはずで、意欲さえあればきっと時差なく受け取れる。それは私が学生だった時よりもずっと進んでるんだろうなと思います。だから自分の家の畑でネギを抜いてくる女の子がAirPodsでフューチャーファンクを楽しむのも不思議ではないし、そういう今の物語を描ければなと思いました。私自身、出身は関東圏なのですが、数年前に近所にコンビニができて大騒ぎしたような田舎の生まれです。

――空想の図書館に飛ぶ描写も興味深かったです。

乙川:少しわかりづらいかなと思ったのですが、パブリックな教室では交わらないであろうタイプの違うふたりが自分たちの世界に入り込んでいる様子を描きたくて、図書館に行っていただきました。彼らの心象風景がかい見えていると思って貰えましたら。

――主人公の好きな音楽ジャンル「フューチャーファンク」はご自身もお好きですか?

乙川:特にそれを聴いているということもないのですが、音楽はハウスやシティポップ系の音楽は好きです。聴きながら漫画を描くことも多いですね。いつも作品毎にプレイリストを作っているくらいなので、音楽から影響を受けている面もあるかもしれません。

――乙川さんは80年代ぽい絵柄のスタイルも特徴ですが、どんな作品に影響を受けたのでしょう。

乙川:親が読んでいた80sの少女漫画はルーツとしては大きいと思います。特に清水玲子先生や成田美名子先生、川原泉先生などの作品、白泉社系の作品が多かったですね。実は私がデビューした雑誌も「花とゆめ」でした。

――今後もぜひSNSに漫画を上げていただきたいです。

乙川:遅筆なので頻繁には上げられないと思いますが、好きに描けたり自分の判断でSNSに上げられるのが同人のいいところ。たくさんの人に読んでもらえる喜びを本作で経験したので、今後も機会があれば投稿しようかなと。

 まだまだ形にできてないアイデアが頭のなかにあるので、今後もたくさん漫画を描きたいです。去年まで雑誌「モーニング・ツー」にて作画で連載を持っていた『はたらく細胞LADY』(原作:原田重光、漫画:乙川灯、監修:清水茜)もぜひ読んでください。

■乙川灯さんによる『深夜高速にふたり』のプレイリストはこちら
https://music.apple.com/jp/playlist/%E5%A4%9C%E8%A1%8C%E3%83%90%E3%82%B9/pl.u-55D6PpqtMx0NDz

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