辻仁成、人生を好転させる方法とは「熱血とユーモアを持って“自分流”を貫くと光る個性が現れる」

辻仁成、人生を好転させる方法

 ミュージシャン、作家、映画監督などマルチに活躍する辻仁成。フランス在住で今年5月には、歴史あるパリのミュージックホール、オランピア劇場にて日本人作家として初めてライブを行った。世界の舞台でも活躍を見せる辻仁成の著書『自分流 ~光る個性の道を行く』(光文社)は、自分らしく生きるためのヒントが詰まった一冊。さまざまな経験を経た彼の力強い言葉に触れると、励まし元気づけられるような心地がする。今の時代にどう生きるか、そして自分自身が日々を楽しく過ごすための思いを聞いた。

自分の人生だからどう思われても構わない

辻仁成、人生を好転させる方法とは「“熱血とユーモア”を持って自分流を貫くと光る個性が現れる」

――辻さんが立ち上げたウェブメディア「Design Stories」をいつも楽しく読んでいます。新刊では、“自分流”でいいんだよと、読者を励ますような内容が印象的でした。

辻:僕は社会人になってからも、一度も組織というものに入ったことがなくて、ずっと我流でやってきたんです。気づけば、音楽も小説も映画も誰からも習ったことがなくて、すべて独学。友人からも「一人文化部」とからかわれていたりして(笑)。でもジャンルに囚われず、どこにも属さない面白さがあると思っています。

――本書では、辻さん流の休息のススメや日々の楽しみ方を提案しています。目まぐるしい現代を生きる私たちにアドバイスをいただけるとしたら、どんなことでしょう?

辻:若い頃、「我慢は美徳」だと教えられてきました。でも、僕はそうは思わなかった。嫌なことを嫌だと言えないことは、心と身体によくない。辛いときは、「辛い」と訴えていいんです。悲しいときには、「悲しい」と声に出して泣いていいんです。我慢は命を縮めます。

 僕は自分が生きていくうえで、楽しいと思う方を向いて歩くことにしています。休みたいときに、ちゃんと休むようにしています。今いる場所が苦しいなら、きっとすぐに脱出するでしょう。どう思われても構わないんです。なぜなら、それは僕の人生だからです。周囲にとやかく言われる必要はありません。人の見ていないところで努力すればいいんです。

――自分の人生を生きているのは、他者でなく自分ですもんね。自分を信じることの重要性についても書かれていますが、自信を持てなくなったときはどうしていますか?

辻:「電柱作戦」というのがありまして(笑)。ここ一番のときに実践するのですが、「次の電柱まではとりあえず頑張れ」と、自分にはっぱをかけるんです。次の電柱まで歩いたら、その先にもまた電柱がある。そこまでまた頑張ろうと自分を励ましながら進みます。そうすると、だんだん歩ける距離も伸びてくる。その積み重ねが自信にもつながりますし、長い人生を生きる術でもありますね。まずは近くにあるものを目標にするのが良いと思います。

人生は続く――フランス人から学んだ生き方

――自分の個性を理解することの大切さについても、繰り返し触れていますね。自分をよりよく知る方法があれば教えてください。

辻:自分を許してあげることです。「頑張り過ぎるのはよくないから、ぼちぼちやろうよ」と自分に言い聞かせて無理をしない。そうすると、自分がよくわかってきます。できることはどんどんやればいい、できないことはやる必要がない。そこをしっかり線引きして生きています。

――フランス人から学ぶ生き方というのも、日本人である私たちにとっては印象的でした。フランスならではの表現である、「C’est la vie.(セ・ラ・ヴィ/それが人生だよ)」という言葉もありましたね。

辻:「セ・ラ・ヴィ」というのは、苦しんでいる人をちょっと励ますための、フランス人らしい控えめな言葉です。彼らは「人生は続く」という表現もします。僕はこちらの言葉の方が好きで、「いろいろあるけれど、それでも人生は続くよ」というのが潔くていいんです。僕も挫けそうな友人にはときどき声をかけますし、彼らも挫けている僕にいつも言ってくれます。「辻、人生は続くんだよ」って。

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