【漫画】この星の「普通」は何かおかしい……ディストピアSF漫画『惑星キマイラ』のヤバい世界観
――本作の制作経緯を教えてください。
糸杉チリン(以下、チリン):本作の主人公・カケルが登場する、7年前に描いた漫画『流刑星アンタレス』の前日譚として作りました。そこで流刑にあう彼がどのように罪人になったかを描いています。できれば、もとの作品も読んでいただきたいですね。あとは現在連載中の『I Believe In You』にも今ちょうど彼が登場しているところです。
――異常なことが「普通」といわれている星、という世界観は現代の風刺なのでしょうか。
糸杉:今の日本っぽい世界にしつつ、理が違うという話はよく描きます。でも現実を舞台にするのは苦手で、ゲームでもメタフィクション作品に感銘を受けることが多いですね。「豚の頭にケールが入っている」という設定は夢に出てきたシチュエーションをそのまま漫画にしたんですよ(笑)。
――絵柄やストーリーは手塚治虫の影響があるのかなと感じました。
糸杉:もともと「ティーン・タイタンズ」やディズニー作品が好きで、そういった絵柄を描く海外のイラストレーターから影響を受けつつ、他の好きな絵なども取り込んだ感じです。手塚治虫さんについては、20代前半くらいから読み始めて、『火の鳥』や『ブラックジャック』に感銘を受けました。彼の作品に触れてから、イラストだけでなく漫画を作り始めたんですよ。
それから彼のスタイルを書籍「手塚治虫のマンガの描き方」や、大事に取っておいた雑誌『なかよし』の1998年4月号の付録「まんが家になろう」を読んで勉強しました。かなり参考になりました。
――どんな時にアイデアが浮かぶことが多いですか。
糸杉:漫画や映画、小説、ゲームなどに触れてから浮かぶことが多いですね。個人的には何かをインプットしないと発想は出てこない気がするので。最近読む漫画は「トーチ」に掲載されているものやXで流れてくる作品、あとはリスペクトしている古い作品など。
「新しい作品を読んだ方がいいよ」と編集の方に言われているのですが、女性が過度に色っぽく描かれている作品は苦手なんですよ……。この考え方に賛成してくれる人も異論のある人もいると思いますが、私はそう考えています。ものづくりには反骨精神も大事だと思うので。