【漫画】元・人魚の男性が「人間になる」代償として声を失った理由とは? ひねりの効いた人魚漫画が話題
――本作の着想はどこから?
伊達しのぶ(以下、伊達):オリジナルの『人魚姫』は足を得る代わりに声を失うじゃないですか。それに対して「なぜ声を犠牲にするんんだろう?」という疑問が子どもの頃からありました。女性の声を奪うのは奪った側が人魚のことを好きだからなのかなと。それで違う視点から描いたら面白いかなと思いました。
最初は同じ『人魚姫』をベースにした別の話を描いていたんですよ。でもにぎやかなキャラクターとして描いた魔女が気に入らなくて(笑)。途中まで描いてボツにして描き始めたのが本作。やっぱり自分が面白いと思ったキャラクターで制作していくのが一番いいですね。
――本作で一番気に入っているキャラクターを教えてください。
伊達:一番気に入っているのは主人公ですね。しゅっとした細身のキャラクターでもよかったのですが、隙と茶目っ気がある性格のキャラが描いていて楽しいんです。それに合わせて周りを固めていく感じ。あと今回は少年目線な形で描きたかったので、美女を強調した方がいいかなと考えて描いたのが魔女でした。
――中盤で登場するギャルもスパイスになっています。彼女が『水ダウ』の話をするのも、いいミスマッチでした。
伊達:物語がスムーズに進行しすぎると面白くないので、声を奪われてコミュ力がないことを強調する場面を作ろうとしてます。以前に描いた『シンデレラ』もそうでしたが、ファンタジーに現実味をプラスしてみるのが個人的に好きなんです。
――童話をアレンジする際に気を付けている点は?
伊達:もともとあるものをアレンジする時は、「主人公のキャラクターを真逆に設定する」のが面白いなと思ってます。
一方で創作漫画の時は、身近な人をモデルにすることが多いですね。以前描いていた『オタクばあちゃん』はアニメにハマったおばあちゃんの話もモデルになった方がいて、それをデフォルメした内容でした。ストーリーからではなく、面白いキャラクターのアイデアが先行しますね。
――アイデアが浮かぶのはどんな時ですか。
伊達:映画や本が好きなのですが、「もっとこうだったらいいのにな」と考えることから着想することは多いですね。あとお風呂に入っている時は閃きやすい気がします。
――次回作などの構想もあれば教えてください。
伊達:今までギャグやラブコメを描くことが多かったので、思いっきりシリアスな作品を描いてみたいですね。客観的に考えないと笑えるかがわからないギャグ漫画に対して、シリアスなものはキャラに感情移入する必要があると個人的には感じています。
次に童話シリーズを描くなら『ヘンゼルとグレーテル』ですかね。あれは、お兄ちゃんが頭がいいから助かる話でしたが、もし抜けてるキャラだったらどうなっていたんだろうと(笑)。それから『人魚王子と魔女』の続編も描こうと考えているので、もし良かったら読んでみてください。