現役女子高生17歳のマンガ家が描く『少女事変』 本人に聞く、学業と両立しながらの創作の裏側がスゴかった

現役女子高生マンガ家に聞く創作の裏側

「なかよし」と「Palcy」に見る、若手作家の育成事情

――日向先生は「なかよし」で読み切りデビューした後に、「Palcy」で短期連載をスタートされています。昨今の若手作家の育成事情について教えてください。

白土:昔は「なかよし」で読み切りデビューしたら、そのまま本誌で連載を目指すケースが一般的でした。ですが、本誌で連載となると月に30ページ以上描く必要があって、それは新人さんにとってはスピード感的になかなか大変だと。「Palcy」だと隔週更新なので、2週間に1回10ページで月に換算すると合計20ページくらい。ですので、「Palcy」は若手作家さんにとって非常にチャレンジしやすい媒体なのかなと思います。

――連載デビューの入口も多様化しているんですね。

白土:まずは読み切りをいくつか経験してから連載を狙うという風潮もありますが、やっぱり最終的に連載を目指すなら、早いうちに連載を想定した企画を考えて、短期連載をやってみるということも重要だと思うんです。読み切りと連載だと考える企画も変わってきますので……。そして、連載の良いところは毎月コンスタントに描くことで、例えば1話と4話を比べるとすごいスピードで成長していたり、実際に連載をしていくなかで上達していくケースもあるんですよ。新人作家さんなら連載しながら1話ごとに、いや原稿1ページごとに成長していく……そういった考えで「Palcy」の短期連載に挑戦していただくのも一つの手なんじゃないかなと最近思います。

――若手作家が陥りがちな悩みや、欠けがちなスキルなどがありましたら教えてください。

白土:先ほど、日向先生のことを“作家に必要な五角形が非常に安定している”と言いましたが、新人作家が安定した五角形を目指すべきなのか? と言われたら必ずしもそうではないかもしれません。得意な部分を伸ばすということも非常に重要だと思うので。ただ読者に手に取ってもらうには、ある程度のレベルまで、その五角形のそれぞれの能力が達している方がチャンスは多いのかなとも思います。あとは、日向先生も仰っていましたが、絵は本当にどれだけ練習できるのかが本当に重要だなと。例えば、苦手な角度を避けているとそのままずっと描けないままなので、今後どのシーンでその角度が出てきても絶対に描けるようにする!くらいの気持ちで何度も練習して原稿に立ち向かう姿勢が大切だなと思います。

――ストーリーも練習あるのみでしょうか?

白土:そうですね。実は、絵は練習しているけれどストーリーは特に何もせずに手癖で描いてしまう方が結構いらっしゃるように感じます。だから、ストーリーも絵と同じくらい練習が必要だと、新人作家さんがこの点に気づけるかどうかが大きな差なのかなと感じています。具体的な練習方法ですと、ヒット作品や自分が面白いと思った作品を逆にプロット、ネーム化する、原稿として描いてみることでプロの作家さんの技を学ぶという方法もあるかと思います。

ジャンルにとらわれず挑戦していきたい

――日向先生は現在高校生3年生で受験勉強真っ只中ということですが、受験が終わったらどんな作品に挑戦したいですか?

日向:少女漫画や少年漫画など、あまりジャンルに囚われずに挑戦したい気持ちがあります。また、「Palcy」はWebでの短期連載だったので、紙面での連載に憧れがあります。それこそ「なかよし」は他の少女漫画雑誌と比べてジャンルの幅が広いので、いつか連載ができたら良いなと思っています。

――受験を終えて進学された際は、マンガ以外の学びの幅が増えそうですね。

日向:もし進学するなら、中国の作品について勉強してみたいなと思っています。学校の図書館で『魔道祖師』(墨香銅臭)を読んでからすっかりハマってしまって(笑)。

――そういった興味関心や学びも全て昇華されて、さらに作家としてパワーアップされるんだろうなと思います。これからのご活躍が楽しみです! 最後に『少女事変』をこれから読まれる読者に向けてメッセージをお願いします。

日向:『少女事変』は私の初連載作品。こうして改めて読み返すと最初の方はすごく不安定だなと反省もあるのですが、せっかく電子書籍として発売されるので、ぜひフェナとイヴ、二人の物語を楽しんでいただけたらなと思います。

白土:シリアスなテーマではあるのですが、暗殺者とターゲットであるはずのフェナとイヴといったキャラクターが魅力的で、あと会話劇がすごく可愛いんですよ。重厚な物語がベースにありつつ、好きになるキャラクターがきっと見つかる……物語とキャラクター、両方楽しんでいただける作品になっているのでぜひお手に取っていただけたら嬉しいです。

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