『ドラゴンボール』『Dr.スランプ』……鳥山明はネーミングセンスも絶妙 インパクト抜群の名を持つキャラクターたち

鳥山明のネーミングセンス

 鳥山明は『ドラゴンボール』の中期~後期を見るとバトル漫画を得意とする漫画家のイメージである。それはもちろん間違っていないのだが、初期の鳥山明はギャグ漫画家であった。そのため、登場するキャラクターの名前には気の抜けた名前、味わいのある名前、癖の強すぎる名前が多いのだ。

 『Dr.スランプ』の主人公の則巻千兵衛と則巻アラレは、その名の通り海苔巻きから連想した名前だが、空豆ピースケとタロウの父は空豆クリキントンだし、中国からやってきた摘一家は、摘突詰(つんつくつん)、摘鶴燐(つんつるりん)、摘鶴天(つんつるてん)と、一度聴いたら忘れられないようなインパクト抜群の名前だ。ちなみに、摘鶴天の妻の名前は摘詰角田野廷遊豪(つんつんつのだのていゆうごう)という。

 個人的には、『Dr.スランプ』でもっともインパクトのあるキャラの名前は、キバルト・デルッヘだろう。単行本の最終巻である18巻、第2回ペンギングランプリに参戦したオートバイレースの世界チャンピオンなのだが、イケメンなのにこの名前というギャップが素晴らしい。鳥山明はおならに関する下ネタをキャラの名前に好んで用いており、『GO! GO! ACKMAN』にもヤキモ・ヘーデルという、これまた素晴らしい名前のキャラクターを登場させている。

 そして、『ドラゴンボール』は鳥山のネーミングセンスが炸裂している名作だ。ピッコロ大魔王の部下はタンバリン、シンバル、ピアノなど全員楽器の名前からとっている。サイヤ人のカカロット、ラディッツ、ナッパなどの名前は野菜から。フリーザの部下のドドリア、ザーボンは果物から。ギニュー特戦隊はギニュー、グルド、リクームなど、乳製品から。ナメック星の人々はデンデやカルゴなどカタツムリに因んだ名前になっているなど、統一感を持たせてある。

屈指の悪役であるフリーザの名前は冷凍庫に由来するが、鳥山明はもともとは冷蔵庫(リフリジレーター)に因んだ名前にしたかったようである。それは、野菜に由来するサイヤ人、果物に由来する部下、そして、乳製品に由来するギニュー特戦隊のメンバーをまとめる存在ということで考えていたそうだが、言葉の響きや呼びやすさのためなのか、冷凍庫のフリーザで落ち着いたようだ。

 『ドラゴンボール』はシリアスな話になってからも、キャラクターの名前に関しては、ギャグ漫画時代と同様に遊び心溢れるものになっている。魔人ブウ戦でもそれは健在で、敵キャラの名前がビビディ、バビディ、そして魔人“ブウ”といった塩梅に、鳥山明らしさが炸裂している。こうしたユニークなネーミングは鳥山明の最大のこだわりのひとつと言っていいだろう。

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