【漫画】1番になれなかった人間はどう生きる? SNS漫画『クラスで2番目に絵が上手かった女の話』に共感
ーー好きなことと向き合う苦しみや輝きを感じた作品でした。創作のきっかけを教えてください。
宮繭子:本作は漫画賞に応募するために描きはじめた作品なのですが、製作の途中で作品が面白いのかわからなくなってしまい描くことをやめていました。そのあと憧れていたコミティア(一次創作物の即売会)に参加しようと思ったときに完成させた本作を出展しようと思いました。
コミティアに参加される方、創作される方に共感してもらえる漫画にしようと思い本作を完成させました。
ーーSNSでは本作に対する共感の声が多く寄せられていました。
宮繭子:コメント1つひとつの熱量が大きく、投稿へのリプライだけでなくメールで感想を頂いたりなど、コミティアで出展したときは3冊しか売れなかったので反響の大きさに驚きました。
ーー本作を描くなかで印象に残っているシーンを教えてください。
宮繭子:主人公の川崎がベランダから夏目と一緒に飛び降りるシーンがすごく好きです。当初はぜんぜん違う構成だったのですが、入稿の直前に「なんかちがう」と思って今の形に修正しました。作中でも敷かれたレールから外に飛び込むイメージのシーンがありましたが、私自身もそんな気分になりました。
ーー川崎さんを描くなかで意識したことは?
宮繭子:私もクラスで1番絵が上手かった人間ではないので、自分自身の存在が川崎に入っていると思います。ただ100%が私というよりも川崎のように「1番になれなかった人はいっぱいいるよね」という気持ちで描きましたし、そんな人々に届いてほしいという思いで彼女を描きました。
そのため書類をコピーしているときの虚無感や、コンビニの店員さんとの交流から生まれるうれしさなど、多くの人が日常のなかで出会ったことのあるような感情を散りばめました。
ーー夏目くん、ユミさんを描くなかで意識したことは?
宮繭子:川崎から見て夏目は同類の人、ユミちゃんは地続きであるものの向こう側の人として描きました。でもユミちゃんにも弱さが見えるように意識しました。たとえばユミちゃんの開いた個展が赤字となったりとか、無意識に人を傷つけてしまったりとか。ただユミちゃんには川崎に絵を描いてほしいという思いがあった、不器用で優しい面もあるということも伝わるように描きました。
また夏目は川崎にとって良くも悪くも呪いのような存在となるように描きました。“俺好きだよ/川崎の絵”という言葉がなかったら川崎もここまで悩まなかったと思うんです。でもこの言葉があったから川崎は生きようとも思えたわけで……。呪いだけど生かしてくれる、そんな存在として夏目を描こうと思いました。
ーー漫画を描きはじめたきっかけを教えてください。
宮繭子:ずっと漫画を読むことや絵を描くことが好きで、大学生のころに二次創作の漫画を描き、SNSに作品を投稿するようになりました。就職後も作品を描いていたのですが、仲のいい友人がオリジナル(一次創作)作品を描きはじめ、私もオリジナルの作品を描くようになりました。
出版社の漫画賞に応募し賞を頂いたこともあったのですが、そのあと作品が掲載されることはなく、読者の方の反応も見れませんでした。それならSNSに漫画を投稿する人として活動しようと思い、現在も創作や投稿を続けています。
ーーお仕事を続けながら漫画を描くことは大変なことかと思います。
宮繭子:漫画を描くことが好きだから創作活動を続けられているのだと思います。読者の方から反応を頂くこともうれしいですが、漫画を描く工程そのものも楽しいです。
うまく描けないときにはしんどさも感じますが、ペン入れをするなかでベタ塗りを施した途端に漫画っぽく見えてうれしさを覚えたり、絵や台詞を自由に描くことができる、ルールがないことも漫画の魅力だと感じています。
ーー今後の活動について教えてください。
宮繭子:もっと漫画が上手くなりたいので次のお話はもっと上手に描けるように頑張ります。本作は川崎が主人公のお話でしたが、ユミちゃん側の人が主人公の漫画も描いてみたいと思っています。
作品を読んでくださった方みなさまへ、この作品を読んでいただきありがとうございました。