『ちはやふる』最終巻発売 あなたが好きな“ヒロイン”は? 若宮詩暢から桜沢先生まで、推せるキャラクターを考察
人気漫画『ちはやふる』(末次由紀)のコミックス最終巻となる50巻が12月13日、発売された。競技かるたの普及に大きく貢献し、多くのファンに愛された15年間。完結記念として、本日付の朝日新聞朝刊に地域別/計10種の広告が掲載されたことも話題になっている。
『ちはやふる』の主人公にしてヒロインは、愛すべき“ムダ美人”であり、誰もが認める“かるたバカ”の綾瀬千早だ。少年漫画の主人公のように熱く、仲間思いで、才能に溢れたキャラクターだが、本作には他にも魅力的な「ヒロイン」が数多く登場する。皆さんは、誰が推しキャラクターだっただろうか。
「もうひとりのヒロイン」と考えて真っ先に思い浮かぶのは、千早と同学年の最強クイーン・若宮詩暢だろう。中学3年生で史上最年少クイーンの座につき、かるただけを見つめて“ひとりで強くなってきた(ならざるを得なかった)”過程が、千早と対照的だ。悩みを共有できる人もなく、千早の存在を認めるまで、孤独に競技かるたシーンを背負ってきた詩暢。終盤、かるたで生きていくため決して向いているとは思えないYouTuberになり、好奇の目にも晒されながら奮闘する姿はヒロインという以上に、「もうひとりの主人公」だった。
瑞沢高校競技かるた部の創設メンバー“かなちゃん”こと大江奏も、重要な役割を担ったヒロインだ。実家が呉服屋で古典に通じた奏は、かるたを「競技」としてしか捉えていなかった千早にも、そして読者にも、札の奥に広がる豊かな世界を伝えた。さまざまな感情を抱かせてくれる、控えめながら芯のある優しいキャラクターだ。
同じく瑞沢高校競技かるた部のメンバーなら、千早たちの後輩として入部した花野菫も印象的だ。“恋愛体質のウザい後輩”というイメージは、早々に払拭される。打算的に見えて、実は他人のことを思いやれる素直な性格。人間的にも、競技者としても伸び代があり、50巻に収録された番外編でフィーチャーされたのも納得だ。
その他、未完の大器から覚醒を遂げた富士崎高校の山城理音、天然キャラと毒舌のギャップが楽しい明石第一女子高校のエース・逢坂恵夢など、競技者にも多くのヒロインが存在するが、かるた部を顧問として支える瑞沢高校の宮内(妙子)先生、富士崎高校の桜沢(翠)先生も、対照的な存在感でそれぞれ魅力的だ。“女帝”と称され、多くの部活動の顧問を務める宮内先生は当初、かるたに対する知識もなかったが、部員たちが本気だということを知ってから、厳しくもあたたかく、よきメンターとして部を支えていく。一方、かるたエリートでクールビューティーな桜沢先生は競技者として千早と戦うシーンもあり、こちらもスパルタながら深いかるた愛を感じる人気キャラクターだ。
大江奏が目指す「専任読手」にも、理音の祖母で、名人・周防久志が「キョコタン」と読んで敬愛する山城今日子をはじめ、魅力的なストーリーを持っている女性が多い。またメインキャラクターの家族では、千早の姉・千歳、真島太一の母・麗子など、エピソードが掘り下げられていくなかで当初の悪印象(理解のなさ)が払拭された人物も多く、ときに美しい涙を見せてくれた彼女たちもまたヒロインと言っていいかもしれない。
もちろん男性キャラクターも含め、最後まで嫌なキャラクターは存在せず、それぞれに物語を彩っていた『ちはやふる』。もう彼ら・彼女らに会えないのは寂しくもあるが、まずはキャラクターの一人ひとりにフォーカスして想像を広げられる名作の完結を祝いたい。