『HUNTER×HUNTER』幻影旅団はなぜ魅力的? “アザーサイドの主人公”ともいうべき存在感を考察
10月24日発売の「週刊少年ジャンプ」2022年47号で約4年ぶりに連載を再開し、ここまで快調に走り続けてきた人気漫画『HUNTER×HUNTER』(冨樫義博)。ジャンプが発売される月曜日、「HUNTER×HUNTER」とともに「幻影旅団」という言葉がSNSでトレンドに入るのが毎週の恒例になっている。本作の内容をなんとなくしか知らない読者にとっては、なぜ「ゴン」や「キルア」のような主役級のキャラクターでなく、「幻影旅団」がこれほど話題になっているのか、よくわからないだろう。
『HUNTER×HUNTER』の読者には常識になってしまうが、幻影旅団とは、本作に登場する“盗賊集団”の名称だ。作品の序盤から、メインキャラクターのひとりであるクラピカの同胞(クルタ族)を虐殺した、無慈悲かつ超凄腕の犯罪集団として語られてきた。隠語のように「クモ」と呼称されるのは、団長をアタマとして、蜘蛛の足の本数=12のメンバーで構成されるため。「この世の何を捨てても許される場所」として知られる政治的空白地帯・流星街で結成され、当初のメンバーは9人だ。
このように、作中最強クラスの“強敵”として語られてきたため、実際にメンバーが登場した際の緊張感と、意外な人間らしさに感情を揺さぶられたという読者は多いだろう。メンバーはそれぞれに個性的で、メインキャラクターたちと比較しても高い良識を持っているように見える場面もある。団長・クロロは容姿端麗&圧倒的な能力で、アザーサイドの主人公といえるような存在感だ。
そう、凶悪極まりない「敵」のはずなのに、なぜか登場に期待し、実力を発揮することを願ってしまうような魅力が幻影旅団にはある。『HUNTER×HUNTER』自体、「敵/味方」「正義/悪」という概念が相対的な作品だが、幻影旅団についても「単純に悪者なのか?」と考えさせられるシーンが多く、具体的なネタバレは控えるが、直近の連載で新たな事実が明らかになっている状況だ。
そのなかでさらに人気を高め、毎週のようにSNSのトレンド入りすることになった幻影旅団だが、2013年1月に公開された映画『劇場版 HUNTER×HUNTER 緋色の幻影』の入場者特典として配布された『HUNTER×HUNTER』0巻において、作者の冨樫義博氏が「全員死にます」と明言したことが知られている。
作中にも様々なギミックや伏線を仕掛け、読者を翻弄してきた冨樫氏のこと「(不老不死という設定ではないのだからいずれは必ず)全員死にます」という意味の可能性も十分にあるが、言葉通りの意味だとしたら、いかに人気キャラクターでも簡単に退場させてしまいそうなのが恐ろしいところだ(実際、何人かのメンバーは戦闘シーンが描かれることもなく葬られている)。こうしたメタ的な情報による“儚さ”も、ファンにとっては幻影旅団の魅力を引き立てるスパイスになっていると思われる。