【漫画】カニが鬼退治に? 昔話を大胆アレンジしたSNS漫画が話題

ーー読み返す度に登場人物の会話や物語の展開に引き込まれてしまった作品でした。創作のきっかけを教えてください。

永田礼路(以下、永田):本作はコミティア(一次創作物の即売会)に出展しようと思い、1日でネーム(コマ割りなどを記したラフ画)をつくり突貫的に描き上げた作品です。もともと生き物が好きで、ピンノが面白い蟹だと思い作品の題材にしました。

 ピンノを題材にすることからはじまり、割ると何かが出てくるものから桃太郎を想起し、蟹から猿蟹合戦を想起しーー。まるで連想ゲームのようにストーリーを考えました。

ーー冒頭のお爺さんたちとピンノ太郎たちの掛け合いが印象的でした。登場人物の台詞や会話を書くなかで意識していることは?

永田:関係あるかわかりませんが、作業をしながら耳で聴けるものが好きなので落語や漫才はよく聴きます。また過去に演劇をやっていたので、頭の中で話しながら台詞を考え、台詞に違和感があるかどうかという点は気にしていますね。

 この場面でこんな台詞を言わないだろうとか、この人はこんなこと言わないだろうという感覚を意識しています。

ーー印象に残っているシーンを教えてください。

永田:バトル漫画を描いたことがなかったため、真似事をしてみようと思い終盤のページを描きました。ただ蟹が糞で攻撃し出したり、めちゃくちゃな展開になってしまったため、2ページほどで挫折してしまいました(笑)。

ーーお医者さんとしても活動しながら、漫画を描こうと思ったきっかけは?

永田:漫画を描きはじめたのは30歳過ぎからでした。手に職をつけるため医者になったのですが、専門医取得後に少し疲れを感じて。このまま医者だけで生きていくのに迷いを感じ、子どものころに漫画家になりたかったこともあって、漫画を描くようになりました。

 医者としても変わった経歴の方だと思うのですが色々とイベントが多すぎて、もうインプットはいいからアウトプットをしたいなと思ったことが漫画を描きはじめたきっかけだと思います。

ーーアウトプットしたい、漫画で表現したいものとは?

永田:若いときから人が亡くなる瞬間を多く目にしてきました。患者さんがいい最期を迎えるために医者ができることは物理的な対処以外あまりないなと思うことがたくさんありました。亡くなる前に幸せかどうかを決めるのは患者さんの生命観や倫理観なので。

 ただ漫画や小説は他者の人生を疑似体験することができるため、死生観について考える機会になるかと思います。そのきっかけにささやかながらなればと思いながら漫画を描いています。医者としての仕事の地続きに創作活動があるのかと。

ーー漫画を描くなかで意識していることは?

永田:私は患者さん含め、誰かに向けて話をするという感覚で漫画を描いていることが多いです。本作のようにちょっとおかしな作品も描いているので、読者の方には何を考えているんだと思われてしまうかもしれませんが……。ふざけたものや真面目なものなど、話の中にもバリエーションがあればいいなと思い、いろいろな作品を描いています。

ーー永田さんにとって“漫画を描くこと“とは?

永田:少し長めの“終活”をするような気持ちで漫画を描いていますね。たとえば親が亡くなったあと、親の考えていたことって意外とわからないじゃないですか。漫画には描く人の考えが出ると思うので、「そんなことを考えていた人がいたね」と思い出せるくらいの記録として作品を残すことは面白いかなと思い、漫画を描いています。後ろ向きに、前向きみたいな感じです。

ーー今後の目標について教えてください。

永田:これまで長期的に描いてきた作品『螺旋じかけの海』の5巻を出したいです。また続きを描くよと言いつつも宙ぶらりんとなっていた作品もあるので、こちらも続編を描きたいです。

 いくつかの商業媒体からお声がけをいただいているので、身の回りがひと段落して、そのときに需要があれば再び商業作品も手掛けてみたいですね。需要がなければ自分の好きなものを描くと思うので、ほそぼそと、よぼよぼになるまで漫画を描き続けていきたいです。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「著者」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる