【漫画】BUMP OF CHICKENの名曲が漫画に? 昭和中期の少年少女を描く『車輪の唄』が切ない

ーー夢を追いたい少年の葛藤は現代にも通じる部分が多いだろうと感じた作品でした。創作のきっかけを教えてください。

天野リサ(以下、天野):本作は駅をテーマに制作をするという大学の課題で描いた卒業制作の作品です。駅といえばBUMP OF CHICKENの『車輪の唄』だなと思ったことが、この作品を制作したきっかけですね。

 ネタバレになるのですが、物語の終盤でふたりの乗る自転車が壊れるシーンがあります。楽曲を聴きながら自転車が壊れてからその先の結末までの展開を思いつき、そこにつながるように前後のエピソードを考えました。

ーー楽曲を元とした漫画作品を創作するなかで意識したことは?

天野:楽曲をそのまま漫画に起こすことがしたかった訳ではなく、あくまでも“楽曲のような”作品を自分なりにつくるということが目的だったため歌詞をなるべく思い出さないようにしつつ、楽曲に抱いていたノスタルジックで切ない男女の別れという私のイメージを大切にして本作を描きました。

 楽曲を好きな人が不快に思う作品を描いてはいけないという思いがありましたが自信がなく、描き終えたあとには少し不安になりました。ただTwitterに投稿すると楽曲を知っている方から「描いてくれてありがとう」「いい作品です」といった言葉を頂けたので、すごくうれしかったです。

ーー本作は現代から少し離れた時代を切り取った作品ですね。

天野:まず自転車の二人乗りが違法でなかった時代を描こうと思い、昭和中期を舞台として選びました。またノスタルジックで切ない作品にしたかったため、舞台は田舎町にしましたね。

 昭和中期では都会が急激に発達しているのに、田舎はそれほど変化していない。都会と田舎のギャップを表現しやすかったのも、当時の田舎町を舞台にした理由です。

ーー「いつか会いにきてね/東京で待ってるからさ!」と話す梅子さんに対し「…行けるわけねえだろ」とこぼす晃彦くんの表情は様々な心情が混じり合ったものかと感じました。

天野:このシーンの晃彦は大きく分けて2つのショックを受けているかと思います。

 1つ目に、住む世界の異なる存在だと思っていた梅子が自由になれない現実を抱えていたことを知り、晃彦は彼女のことを自分と同じ人間だと思えるようになっていました。しかし、その直後に梅子が東京へ行くことを知り、改めて立場の違いを知ったことでショックを受けました。

 2つ目に、晃彦は夢を諦めてスッキリとした気持ちを感じていたのに、梅子は夢をかなえようとしているということが晃彦には裏切りのように思えてしまい、劣等感が強まってしまったというショックがあります。ふたりの距離が1度近づいたからこその苦しみの表情だと思います。

ーー創作活動をはじめたきっかけを教えてください。

天野:昔から漫画が大好きで、家にあった『うしおととら』、『らんま1/2』といったサンデー系列の漫画をよく読んでいました。今サンデーさんにお世話になっているのも、小さいころに読んでいた漫画の影響が大きいと思います。

 中学生のころに陸上競技をやっていたのですが、進路選択の際に陸上と漫画の2択で漫画を選び、高校時代から本格的に描くようになりました。就職活動をすることに近いイメージで漫画を描いていたと思います。

ーー高校生のころから本格的に漫画家を目指すようになったのですね。

天野:高校2、3年生で漫画の持ち込みをしたのですが、2回目の持ち込みをした際に今もお世話になっている担当さんに就いてもらいました。そのあと漫画に関する学科のある大学へ進学し、大学4年生のときには短期連載をさせてもらいました。ただ卒業制作も4年生からなので、『車輪の唄』の制作はあまり時間の余裕がなかったです。

ーー今後の目標を教えてください。

天野:大学を卒業して本格的に漫画家を目指すという段階なので、まずは連載を目指していきたいです。読んでいて感動できる作品はすばらしいなと思うので、そんな作品をつくれたらなと思っています。

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