【漫画】扇風機が不調、汗だくの女性が取った行動とは? 創作漫画『最後の交信』の描写がすごい

ーー一般的なイメージとは少々異なる、リアルな夏らしさを感じた作品でした。創作のきっかけを教えてください。

もぐこん:本作は12年前に描いた作品です。それまで日常の会話を題材とした作品を描いており、台詞の少ない漫画を描きたくなったことが本作を描こうと思ったきっかけです。

 また当時は汗をかくことに興味があり、季節もちょうど夏で「いつも暑いなぁ……」と思っていました。そのため暑い夏に汗をかきながら、壊れかけの扇風機と格闘する作品を描いたのだと思います。

ーーまさしく本作を読むなかで暑い夏の気だるい感覚を覚えました。

もぐこん:畳の繊維や扇風機のカバーの針金を1本ずつ描くことにより、夏の“くどさ”を表現できたのかなと思います。また地面を張って移動しようとするキャラクターの気だるそうな様子も、暑い夏の感じを演出できたのかと。グラウンドで汗を流す野球少年の姿を見ると夏を感じますが、暑い部屋でダラダラとする人の様子からも自分は夏らしさを感じますね。

ーー描きこみの量など、最後のページはそれまでのページとの対比を感じました。

もぐこん:最後のページでは古くから大切にされてきた「からくり人形」と、雑に扱われてきた「扇風機」との対比も意識していました。昔から扇風機が好きで、美術大学に通っていたころからよく扇風機の絵を描いてきました。そのため本作の題材として自然と扇風機を選んだのかもしれないです。

ーー台詞の少ない本作を描くなかで意識したことは?

もぐこん:当時の私は演劇に興味を持ち始めたことであり、人間が身体を動かすことに対し意識が向くようになっていました。扇風機の周りを匍匐(ほふく)前進でモゾモゾと動いたり、うまくいかずジタバタしたりーー。本作を描くなかで“暑さ”と組み合わせた人の動きを描こうと意識していたのだと思います。

ーーもぐこんさんは6月に単行本を出版すると伺いました。感想を教えてください。

もぐこん:これまで単行本として漫画や小説を読んできたこともあり、紙の本として発売が決まったときはうれしかったですね。本屋さんで自分の好きな作品と共に自身の本が置かれることを想像すると、すごいな……と思います。

ーーいつごろから漫画を描き始めましたか?

もぐこん:中学生のころから漫画を読み「漫画家ってかっこいいな」と思っていましたが、漫画を描き始めたのは大学時代からです。当時から数えると漫画を描き続けて17年ほどになります。大学院に入り絵画の制作をしながら本格的に同人活動をはじめました。

 そのころからコミティア(同人誌の即売会)に参加するようになったのですが、そこで知り合った人々で今でも創作活動を続けている人の多くは雑誌に載ったり、本を出版したりしているんですよね。考えを持って創作を続けている人は雑誌での掲載や本を出すといったところに至る気がします。

ーー本を出版することは漫画作品を創作する人にとって目標のひとつかと思います。

もぐこん:お笑い芸人さんの話にはなりますが、芸人として成功するには「どれだけ場数を踏むか、どれだけ打席に立つか」が大切だということをよく耳にします。これは芸能界だけに限らないとは思いますね。続けていれば絶対に紙の本が出版できるとは言えませんが、続けることをやめたら終わりなのかと。

ーー今後の目標を教えてください。

もぐこん:単行本3巻くらいの、少し長めの漫画を描きたいです。これまで短編作品を載せてもらうことが多かったのですが、短編だと幹のようなメインしか描くことができないと感じていました。ページ数の制約から枝葉のような部分は切らざるを得ないので。

 ページ数の多い漫画の魅力として、本筋とはズレた話も描くことができる点があると思います。途中にゆるい話を挟んだりして、脱線しながらも進んでいくような作品を描いてみたいです。

★もぐこんさんの作品『推しの肌が荒れた』などが収録された単行本が6/9(金)に発売されます!

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