【漫画】創作がノルマになってしまったあなたへ……漫画『パン屋のお姉さんと美術部男子高校生の話。』に共感

ーー創作活動に励む多くの人に価値を与えてくださる作品だと感じました。創作のきっかけを教えてください。

ふじもとまめ(以下、ふじもと):漫画の専門学校で出会った先生への恩返しとしてこの作品を描きました。専門学校の卒業を控えた12月頃に恩師である先生を題材とした漫画を描こうと思い、2月には完成した作品を先生に読んでいただきました。

 自分の描く作品に自信を持てないなか、背中を押してくれていたのが先生でした。1つの区切りとして、先生へ恩返しができたのかなと思っています。

ー-日影くんのような、創作活動に悩むキャラクターを描こうと思った理由とは?

ふじもと:自分も創作で悩んだ時期が長く、一種の自己投影として日影くんを描きました。悩んでいた当時の自分だったら周りの人にどう導いてほしかったのか。そんなことを考えながら、日影くんを喜ばせる方向に導ければと考えていました。

ー-創作活動と共にパンづくりを作品の題材とした理由を教えてください。

ふじもと:パンが好きだったからです。触るとふわふわしていて、小麦の香りをかぐと幸せな気分になるので……。日影くんを幸せな方向に導くことを考えたとき、パンの存在があることでよりやさしく導くことができるかと思い、パンづくりを物語の題材として描きました。

ーー作中ではパンづくりの工程や材料がとても細かく描かれていると感じました。

 現在パン屋でアルバイトをしており、働きながらパンづくりを学ばせてもらっています。その経験からお話のなかでパンのつくり方を詳しく描くことができました。

ー-本作を描くなかで意識した点を教えてください。

ふじもと:専門学校の授業にて、お話をつくるなかで主人公は成長しなければならないと学びました。成長のためには主人公に試練を与えなければいけません。ただ、私は主人公を責めるような描写が苦手なんです。

 成長の過程を生み出すには、たとえば主人公の陰口を言うキャラクターを配置するなど、様々な手段があります。しかし物語のなかに悪意のある人間を置くのではなく、人の善意を受け止めたなかで成長させたい。主人公を責めるキャラクターを置かないようにしようと意識しながら、成長の物語をつくっています。

ー-なぜ悪意のあるキャラクターを置きたくないのですか?

ふじもと:現実ではだれかに傷つけられることがあるかと思いますが、物語のなかは夢の世界でもあるので、だれかがだれかを傷つけるような光景を見たくないと思って。自分の描く作品のなかでは、主人公にはやさしい人たちに囲まれてほしいという思いが1番にあります。

ー-創作活動を始めたきっかけを教えてください。

ふじもと:高校生のころ、自分の描いた二次創作の作品を友だちが読んでくれたのですが、感動して涙を流してくれたんです。そのときに自分でも誰かの心を動かせるのだと思い、漫画家になりたいという気持ちが芽生え、専門学校への入学を決めました。

ーーふじもとさんは小説のコミカライズも手掛けています。オリジナルの作品である本作と比較して創作における違いはありましたか?

ふじもと:コミカライズでは原作者さんの言葉に沿って絵を載せることを意識しています。キャラクターの原案もあることが多いので、原作を引き立てられるように描いています。

 本作のように1から漫画を作る際には、自分の言葉で、自分のつくった人たちを導くことを意識しています。

ー-ふじもとさんは“導く”という言葉を多く口にする印象を受けました。

ふじもと:“導く”という言葉は、実は恩師である先生が常に言ってくださった言葉で……。背中を押すのではなく一緒に歩いてあげることが“導く”ことだと考えています。

 そんなイメージを教えてくださった先生がいなければ、私はもっとちがう作品を作っていたと思いますし、私だけでは今のような作品を描けていないと思います。

ーー今後の目標について教えてください。

ふじもと:高校生のときに感じたこと、自分でも人の心を動かせるんだと感じた経験から、自分の思っていることを伝えたいと思い、オリジナルの作品で連載をもらいたいと思っています。

 ただ、様々なお仕事から自分のスキルアップにつながることも多いので、頂いたお仕事にはなるべく受けたいです。最終的には自分の作品を読んでもらえるよう、がんばっていきたいと思います。

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