中村獅童が語る、“仕掛け絵本”制作の理由 「子どもたちが観に来なくなったら、歌舞伎は終わる」
獅童:結果的にそうなれば嬉しいけれど、やっているときはそこまで考えないですね。「すべては歌舞伎のため」という気持ちで映画に出ていたら、映画を作っている人に失礼ですし、せっかく映画俳優として呼ばれているのに歌舞伎のことを考えてやっていたら、もうそれは歌舞伎役者でしかないですよね。
結果的に歌舞伎の宣伝になっていれば、それはそれで成功だし、歌舞伎に戻ったときに視野が広がっていたら、新しい表現を歌舞伎に取り入れられる。それだけです。映画に出るときは、映画俳優・中村獅童として全力で。監督に「歌舞伎っぽくやって」と求められれば、やりますけどね(笑)。
――お話を聞いていて、伝統芸能に触れるきっかけを生み出していくことの重要性をあらためて感じました。歌舞伎座でただ待っているだけでは、子どもとの接点を持つこともできないんですよね。
獅童:そうですね。歌舞伎って意外と単純なんですよ。スーパーヒーローがいて、悪役がいて、道化がいて、普通の人がいて。キャラクター性がすごく分かりやすいんです。映画『スター・ウォーズ』も、歌舞伎のキャラクターバランスを参考にしたらしい、という話も聞きますし、それのくらい王道のヒーロー物語でもあるんです。
本作も、ページを開くたびに飛び出してくる登場人物のキャラクター感を、親子で楽しみながら読んでもらいたいですね。きっと、歌舞伎に馴染みのないお父さん、お母さんも多いでしょうし。お面を付けて、お子さんと一緒に遊んでもらって、少しでも歌舞伎に興味を持ってもらえて、実際に観にきてもらえたら、本作を作った甲斐があります。もちろん、その中でも特に僕が出ている歌舞伎の公演を観に来てほしいですね(笑)。