色あせない名作『赤ちゃんと僕』の魅力 この約25年で変わったものと、変わらないもの

『赤ちゃんと僕』時を経ても増し続ける魅力

現代に繋がる社会問題

 赤僕で描かれる社会問題は、1990年代を表しているものもあれば、「今も同じだ」と感じられるものもある。

 社会問題を扱ったエピソードのテーマは、いじめや虐待、親の離婚など子供が関係するものから、学歴差別やダブルインカム家庭の苦労まで多岐に及ぶ。

 1巻では、母を突然亡くしたばかりの拓也の心情が細かく描かれる。ヤングケアラーという言葉もない時代だ。「読んでいて辛い」と思いそこで本を閉じる読者もいるという。

 しかし、1990年代という時代背景を踏まえたうえで、読み進めてほしい。昔は、「上の子が下の子の面倒を見る」ということが風潮としてあった。だから母親を亡くしているということが前提としてあるとはいえ、実の世話をする拓也姿は、90年代以前、「兄」や「姉」と役割づけされた多くの子供たちの姿と似ているかもしれない。

 現代と異なるところ、現代と同じところをそれぞれ見つけてみると、連載終了以降の約25年で何が変化して何が変化していないのか、よくわかる。赤僕はそういった楽しみ方もできるのだ。

愛され続ける『赤ちゃんと僕』

 1990年代に子供だった筆者は、今も赤僕の単行本全巻を大切に保管し、ときどき取り出して読んでいる。同じような人はたくさんいるだろう。

 また、赤僕の連載当時既に大人だった人や、まだ生まれていなかった人にもこの漫画をおすすめしたい。読みながらある人は自分の子供時代を思い出すはずだし、ある人はひとつの時代を赤僕から感じ取るだろう。

 男女問わず人気のある『赤ちゃんと僕』。その面白さ、興味深さの幅は、時を経てどんどんと広がるはずだ。

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