新作映画への期待値も高い『ガリレオ』シリーズが首位 文芸書週間ベストセラー

文芸書ランキング『ガリレオ』シリーズ首位 

週間ベストセラー【単行本 文芸書ランキング】(9月14日トーハン調べ)

1位 『透明な螺旋』 東野圭吾/著
2位 『九十八歳。戦いやまず日は暮れず』 佐藤愛子/著
3位 『硝子の塔の殺人』 知念実希人/著
4位 『月曜日の抹茶カフェ』 青山美智子/著
5位 『みとりねこ』 有川ひろ/著
6位 『52ヘルツのクジラたち』 町田そのこ/著
7位 『ビジネス小説 もしも徳川家康が総理大臣になったら』 眞邊明人/著
8位 『花束は毒』 織守きょうや/著
9位 『炎上フェニックス 池袋ウエストゲートパークⅩVII』 石田衣良/著
10位 『テスカトリポカ』 佐藤究/著

 9月第2週の文芸書週間ランキング、1位は木村拓哉&長澤まさみ出演で映画化された『マスカレードナイト』が絶賛公開中の東野圭吾による『透明な螺旋』。福山雅治主演でドラマ化・映画化されたガリレオシリーズの最新作である。

 房総沖で発見された銃殺死体の関係者として、ガリレオこと天才物理学者・湯川学の名前があがるのだが、事件を追う過程で、これまで語られることのなかった彼の家族関係や過去が明かされていき、ミステリーとしても人間ドラマとしても驚きに満ちた内容となっている。〈愛する人を守ることは罪なのか〉といううたい文句で想起させられるのは、同じガリレオシリーズのなかでもとくに人気の高い『容疑者Xの献身』だが、悪意や保身からではなく、誰かを守るために重ねられた嘘と罪、は多くの東野圭吾作品に通底するテーマのひとつ。シリーズ10作目だからこそ味わえる湯川の“変化”に対する感慨とともに、東野圭吾の真髄に触れられる1冊となっている。

 ちなみにガリレオシリーズの1作目が発表されたのは1996年。石田衣良がデビュー作となる「池袋ウエストゲートパーク」でオール讀物推理小説新人賞を受賞したのは、その翌年である。同作は今なお根強い人気を誇り、最新作『炎上フェニックス 池袋ウエストゲートパークⅩVII』は9位にランクイン。今作では“パパ活女子”や“ぶつかり男”、コロナ禍の“デリバリー配達員”などが登場するが、読者にとっても他人事ではない今この瞬間を常に描き続けているからこそ、時代が変わっても愛され続けているのだろう。

 「まさか続編が出るなんて!」とファンを歓喜させたのは、4位の青山美智子『月曜日の抹茶カフェ』。『お探しものは図書室まで』で本屋大賞2位を受賞した青山、累計23万部を突破したデビュー作『木曜日にはココアを』の続編である。前作は、川沿いの桜並木のそばにたたずむ喫茶店マーブル・カフェを訪れる人たちを中心に、東京とシドニーを行き来しながら、人生の小さな奇跡を描きだした作品だった。今作の舞台となる抹茶カフェというのは、マーブル・カフェの定休日である月曜日に一回だけ催されたイベントだ。京都にある茶屋の若旦那と、携帯ショップ店員の女性の出会いから始まる本作では、東京と京都をいきつもどりつしながら、さまざまな一期一会を描きだしていく。

 まるで運命のように未来に繋がっていく出会いは、それはそれでとても素敵なことだけど、だからといって、その場限りの出会いが、小さくて軽いものだというわけではない。そもそも、一期一会という言葉は、茶道からうまれたもの。いつもと同じ作法で、同じ顔触れで行われる茶会だとしても、生涯に一度の機会と思って誠意を尽くす、というのは日々を過ごすうえでも大事な心得だ。よく知っているはずの友人や家族だって、ふとした瞬間にいつもとは違う顔を見せることがある。その瞬間に、改めて出会っていくことが、その出会いを見過ごさずに明日を生きる糧としていくことがどれほど大事なことなのか、12人の主人公を通じて描いていく本作は、簡単に人と会うことができなくなった今の世の中だからこそ、より沁みる。

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