『名探偵コナン 緋色の弾丸』でも大活躍! 大人気キャラ・灰原哀の軌跡を考察

灰原哀はコナンと“運命共同体”

 『名探偵コナン』における最重要人物のひとりであり、ファンからの絶大な人気を誇るキャラクター、灰原哀。原作登場から20年経った今もなおその人気は衰えることがない。現在公開中の映画『名探偵コナン 緋色の弾丸』でもコナンと灰原の息の合ったコンビネーションは健在だ。(https://realsound.jp/movie/2021/04/post-748253.html

 本稿では先だって公開した『赤井秀一はどんな足跡を辿ってきた? 意味深な登場、来葉峠での死闘、安室透との確執まで振り返る』(https://realsound.jp/book/2021/06/post-782294.html)に引き続き、『名探偵コナン』本編における灰原哀の活躍について振り返りたい。

「黒の組織から来た女」(第18巻)

青山剛昌『名探偵コナン』18巻
青山剛昌『名探偵コナン』18巻

 灰原の初登場は第18巻と実は割と遅め。ミステリアスな雰囲気を漂わせる転校生として登場し、コナンも最初こそ普通の女の子として接していたが、彼女の突然の告白に衝撃を受ける。

APTX4869…あなたが飲まされた薬の名称よ…あら、薬品名はまちがってないはずよ…組織に命じられて私が作った薬だもの…

 灰原は新一が飲まされて幼児化した毒薬の開発者、宮野志保であったが、唯一の肉親であった姉を組織に殺され、それに対抗すべく薬の開発を中断。組織の反感を買い、研究室のガス室に閉じ込められる。自分が開発した薬を飲み自殺を試みるものの、新一と同じように身体が縮み、監禁されていたガス室から脱出したと、灰原が幼児化した経緯が明かされる。また、その唯一の肉親である姉というのが、第2巻でコナンと接点を持ちながら、組織のメンバーであるジンに射殺された宮野明美だった。実に16巻、4年越しの伏線回収となったこのエピソードは読者を驚かせた。

 その後も作者の青山剛昌は『コナン』において10~20年越しの伏線回収を行ってみせるなど、巧妙な伏線とその回収は『コナン』の大きな魅力のひとつとなっている。灰原哀(宮野志保)と宮野明美の関係が明らかになったこの回は、その後の『コナン』の伏線と回収による読者の想像を上回るストーリーテリングの礎となったエピソードだろう。

「青の古城探索事件」(第20~21巻)

青山剛昌『名探偵コナン』20巻
青山剛昌『名探偵コナン』20巻

 18巻での登場以降、レギュラーキャラとして登場するようになった灰原。この「青の古城探索事件」では、ふとしたことをキッカケに森の中で見つけた古城を訪れる。城の中で白骨化した死体を見つけたコナンが何者かに襲われたことをきっかけに阿笠博士や元太、そして光彦たちが相次いで行方をくらます。

 このエピソードはコナンたちメインキャラクターが次々に姿を眩ます展開や、犯人の描かれ方がホラーめいて印象的な回であるが、灰原がコナンのことを既に理解しているような描写が印象的な回でもある。

解けるとしたら、この城のどこかに消え失せた、好奇心旺盛なミステリーグルメさんぐらい…かな?

大丈夫…江戸川君はあなたが心配するようなヤワな男じゃないわ…彼なら自分の脱出ルートくらい自分で見つけ出せる…

 歩美が思わず嫉妬してしまい、コナンのことが好きなのかと聞いてしまうほど、灰原はこの時からコナンに信頼を寄せていることが分かる描写だ。思えば灰原とコナンは作中でも数少ない幼児化したキャラクターである。お互いにしか分かり得ない境遇を持ち、共に困難を乗り越えなければならない、言わば運命共同体のようなふたり。そんなふたりの今後長く続く関係の萌芽を感じさせるエピソードだ。

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