まるで『ジョジョ』の岸辺露伴? 「ジャンプ」ネクストブレイク作品『アンデッドアンラック』が衝撃のメタ展開
その後、アンディと風子は、安野に会うため、カナダのスタンレーパークへと向かうのだが、そこに人の人生を食らう怪物(UMA)・オータムが現れる。今のアンディたちの力では、オータムを捕獲することができないと知った安野は2人を連れて逃走。安野は漫画によって未来予知ができる否定者だったが、彼の目的はループしている今までの世界とは違うエンディングを作り出すことだった。
そのためには風子とアンディのパワーアップが必要で、安野は「具現化の力」で生み出したオータムの爪でアンディを本に変えて、風子を過去へと送り込む。そこで風子は18世紀のアメリカを旅するアンディと対面。彼の人生を追体験することで(記憶の中の)アンディ=ヴィクトルと対峙することになる。相変わらず超展開の連続だが、今回、何より面白かったのは安野雲の登場だろう。
漫画の中に漫画家が登場する展開は、古くからある手法で、手塚治虫も『バンパイヤ』等の作品に自分自身を漫画のキャラクターとして登場させている。ジャンプで言うと『ジョジョの奇妙な冒険』第4部に登場した岸辺露伴が有名だ。後に『岸辺露伴は動かない』という連作短編集の主人公になるくらい本編そっちのけの強烈なキャラクターとなった岸辺露伴だが、安野雲は、露伴に匹敵する強烈な存在感を見せている。アンディを分厚い本に変える場面などは、露伴が劇中で使う、相手を本に変えることで、記憶を読んだり、行動・記憶を操ることができる「ヘブンズ・ドアー」を思わせるものがある。
世界がループしていることや、新しい理(ルール)が世界に追加されたりといったメタフィクション的要素が盛りだくさんの本作だが、世界の命運を予知し、そのことを漫画にすることで未来の仲間たちにメッセージを送る安野は、まるで作者自身が漫画の中に参加して、アンディたちを助けているかのようで、『アンデッドアンラック』ならではの超展開だと言えるだろう。
普通、こういう展開が続くと、物語が複雑になり過ぎて敷居が上がってしまうものだが、最終的に面白いバトル漫画として読めてしまうことこそ、本作の一番凄いところかもしれない。
■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。
■書籍情報
『アンデッドアンラック』既刊5巻
著者:戸塚慶文
出版社:株式会社 集英社
https://www.shonenjump.com/j/rensai/undead.html