ディアボロ、エンリコ・プッチ、ファニー・ヴァレンタイン大統領……『ジョジョ』最もドス黒いボスキャラは?
アニメ『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズの世界観を体験できる期間限定テーマパーク『JOJO WORLD in YOKOHAMA』が、3月5日より横浜ワールドポーターズ内にオープンした。キービジュアルに描かれているのは、第1部から第5部までの歴代主人公たち。善と悪、光と影のように、ジョースター家の血統と相反して『ジョジョ』シリーズで高い人気を誇るのが、各部の宿敵、ヴィランたちである。
第1部から第4部までのラスボスを振り返った前編に続き、本記事では第5部から第8部までの悪役たちを紹介していく。
ディアボロ(第5部『黄金の風』)
「われわれはみんな『運命の奴隷』」という人間讃歌の行き着く先、『ジョジョ』シリーズの神髄が描かれている第5部。運命に抗い、暗闇の荒野に進むべき道を切り開いていくジョルノ・ジョバーナたちの前に立ち塞がるのが、ギャング組織「パッショーネ」のボス・ディアボロである。
スタンド「キング・クリムゾン」は、この世の時間を数十秒消し去り、その中で自分だけが動くことができる能力。さらに、十数秒先の未来の映像を予見できる「エピタフ(墓碑銘)」の能力も兼ね備えた、第5部のテーマを象徴するようなキャラクターだ。停止した時の中を動けるDIOの「ザ・ワールド」と混同しやすいが、「ザ・ワールド」は一時停止、「キング・クリムゾン」はスキップと考えれば理解しやすいだろう(吉良吉影のスタンド「キラークイーン」の能力「バイツァ・ダスト」は巻き戻し)。
そのスタンド能力だけでなく、ヴィネガー・ドッピオとの二重人格、さらにジョルノたちとのラストバトルではジャン=ピエール・ポルナレフが「シルバー・チャリオッツ・レクイエム」を発動させ、魂の入れ替えが発動するなど、『ジョジョ』シリーズの中でも難解な設定と展開だったとも言える。
長らく「キング・クリムゾン」のスタンド像とドッピオを盾に読者にもその正体を隠していたが、ラストバトルでようやく素顔を解禁。その相手が階段の先にいるポルナレフというのは、「ありのまま今起こった事を話すぜ!」のセリフでも有名な、第3部でのDIOとの対峙を彷彿とさせるシーン。DIOもこの場面が第3部において素顔初解禁だった。
徹底した秘密主義者。恐怖とは過去からやって来ると考え、自身の手がかりに繋がる娘のトリッシュ・ウナをも殺そうとしたディアボロは、ミミズのようにはい出てきたポルナレフに「人の成長は未熟な過去に打ち勝つこと」と唱えている。永遠なる絶頂を求め、絶対的誇りの元に自身が「帝王」だと信じてやまないディアボロは、スタンドが「矢」に貫かれることによって発現するスタンドパワーを運命からの「貢ぎ物」だとして支配しようとしたが、ジョルノの「ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム」の前に敗北。「死」という真実にもたどり着けず、何度も死の淵を彷徨うこととなる。
ブローノ・ブチャラティやレオーネ・アバッキオ、ナランチャ・ギルガなど多くの犠牲を伴ったが、ここまで到達できたことが勝利。ジョルノは「去ってしまった者たちから受け継いだものは、さらに『先』に進めなくてはならない」と生き残った者の役目を提唱する。第5部で描かれているのは、結果だけを求めずに真実に向かおうとする意志、正義の心である。
エンリコ・プッチ(第6部『ストーンオーシャン』)
『ジョジョ』シリーズは第6部より巻数が一旦リセットとなるが、2巻でスタンドの「ホワイトスネイク」が、4巻で本体のプッチ神父が登場していることは、先述したディアボロとは対照的である。生前のDIOから「真の勝利者とは『天国』を見た者の事だ」と「天国へ行く方法」の存在を教えられるも、その方法が書かれたノートは空条承太郎が焼却。プッチはその記憶を知るために、「ホワイトスネイク」を発動させる。
能力は、人の「心」を記憶とスタンド能力の2枚のDISCにして取り出す。承太郎は「スタンドDISC」と「記憶DISC」の2枚を抜き出され仮死状態となった。「天国へ行く方法」により、プッチが持っていたDIOの指の骨から「緑色の赤ちゃん」が誕生。時は「新月」、「ケープカナベラル・ケネディ・宇宙センター」を舞台に、引力に導かれるかの如く、プッチは「天国」へと向かう。この「天国」とは人間の幸福であり、さらなる次元に行くこと。プッチは緑色の赤ちゃんと合体して、重力を逆転させる能力を持つスタンド「C-MOON」を発現。さらに最終決戦で進化を遂げ、スタンド「メイド・イン・ヘブン」を手に入れた。能力は時の加速。承太郎のスタンド「スタープラチナ」の時の停止にも反応して見せた、時を操るスタンド能力の一つの到達地点とも言えよう。
プッチの目的は、時の加速によって宇宙が一巡し、新しい世界を迎えること。人の出会いとは「重力」。運命も同じように繰り返される。人類が未来の全てを体験すれば、独りではなく全員が未来を「覚悟」できる。「覚悟した者」は「幸福」であり、「覚悟」は「絶望」を吹き飛ばす。これがプッチとDIOが求めていた「天国」だ。
プッチの目論見通り世界は一巡するが、生き残ったエンポリオ・アルニーニョが隠し持っていた「ウェザー・リポート」のスタンドDISCの能力によってあえなく再起不能に。ウェザー・リポートはプッチの弟。エンポリオの「人の出会いも『重力』!あんたは因縁がきれなかった!」というセリフがプッチの敗因である。なお、この一巡した世界は、後の第7部『スティール・ボール・ラン』に繋がっていくこととなる。
また、この第6部で描かれているのは、真の邪悪。作中に登場するサンダー・マックイイーンは道連れにしたいと思った相手を一緒に自殺に追い込むスタンド「ハイウェイ・トゥ・ヘル」の能力を持つ。敵意もなければ悪気もない。自分を被害者だと思い込み、他人に無関心のくせに誰かがいつか自分を助けてくれると望んでいる。悪より悪い「最悪」、他人を不幸に巻き込んで道連れにする「真の邪悪」だとプッチは語る。しかし、プッチもまた運命の答えを知ることが自分の使命と信じ、「ホワイトスネイク」で他人を利用してきた悪。ウェザーはプッチに告げる。「自分が『悪』だと気づいていない…もっともドス黒い『悪』だ…」と。