カメラマン桑島智輝が語る、“妻・安達祐実を撮る”ということ「キレイな花があったからそれを摘む、くらいの感覚」

桑島智輝が語る、“妻・安達祐実を撮る理由

ガーリーフォトブームの影響

――あの傑作の裏側にそんなことがあったんですね。映画の話が出てきましたが、今回の作品にはルイス・ブニュエルの映画のようなカットもありました。やはり映画の影響はありますか?

桑島:直接どの作品に影響を受けたというわけではなくて、すごく好奇心旺盛な青年期を過ごしたんですよ。岡山の田舎だったので、情報がないじゃないですか。ルイス・ブニュエルっていう名前が出てきたときに、すげえ知りたくなるんですよ。そういうものにすごく飢えていたから、『STUDIO VOICE』とか『Quick Japan』も大好きだったし。『DicE』には牛が輪切りになった状態でホルマリン漬けになっているダミアン・ハーストの作品が入っていたりして(笑)。そういう気持ち悪いというか、ぶっ飛んだものを買って、高校の友だちに「すごいだろ」って見せるのが好きだったんですよ。「新しいイメージ」というものはずっと追い続けているかもしれない。

――10代の頃の影響は大きいですよね。

桑島:大きいですね。その頃にいろんなものが形成された感覚があります。高校のときにテクノにハマったんですよ、90年代中盤だと思うんですけど。テクノって、アーティストが表に出てこないことも多かったじゃないですか。そういう「表に出ないけど、めちゃくちゃクールでカッコいいものを作って出す」みたいなことへの憧れがありました。電気グルーヴのコピーバンドで、「中国人」というバンドをやったり(笑)。


――それはイタい(笑)。当時はいわゆるガーリーフォトブームだったと思うのですが。

桑島:テクノにハマる前にそういうのが出てきて、『シャッター&ラブ』という写真集が飯沢耕太郎さんの編集で出たんですよ。蜷川実花さんの初期の写真とか、HIROMIXさんや長島有里枝さんとか。半径数メートルのところでコンパクトカメラで撮ってて、「こんなにオシャレな生活が撮れるんだ!」って思って写真を始めたんですけど、でも自分の周りって田んぼとかしかないから撮れる風景がまったく違って、「こんなはずじゃなかった」感がすごくあるんだけど(笑)。ただ、写真を撮ることは面白かった。そのときからオブジェとか風景とか、気持ち悪いものを撮るのが好きだったから、それで段々写真にハマっていった感じなので、影響はすごくあります。

――とくにどの方の影響を受けましたか?

桑島:特にだれというよりは、当時はグロテスクな写真とかが好きだったから、先ほども言った『DicE』のビジュアルが気持ち悪い感じとは好きでしたね。あとカメラマンではないですけどキクチヒロノリさんとか、根本敬さんの漫画の気持ち悪さとか、露悪的な感じが好きでした。あの当時って、スカムブーム、悪趣味ブームがあったじゃないですか。その辺に結構やられていたかもしれないです。

   自分は高校生だし社会に対抗できないんだけど、でもやっぱりムカついてるし、そういうのが強かったから反発として露悪が出るという。それが自分の自己表現みたいな感じになっていて、ヘンテコな高校生でしたよ。90年代特有かもしれませんね。2000年を目の前にして、不安定というか、終末思想的な感覚はすごくあったなと思います。

――90年代サブカルの影響そのままですね(笑)。次の作品の構想はすでにありますか?

桑島:安達祐実という俳優を撮っている以上、「芸能との戦い」みたいなものがある。それはもう仕方がないし、それによって売れている部分も往々にしてあるし、助かっている部分もたくさんあります。でも「そうじゃないところでの勝負」にすごく興味があります。『我旅我行』の奥付のクレジットは英語表記もあるんですよ。ステイトメントも、プロフィールも全部英語です。しかも最後、安達祐実が日本でどういう活動をしているかが英語で説明してあります。


 次作があるとしたら海外に向けて作りたい。写真集を出すと、虚脱感というか虚無感みたいなのが襲ってきて、そこでまた自分の写真が変わっていくんですよ。『我旅我行』が出たあとも、普段撮っている写真が変わってきて、いまテストしながら別のものに変化している状態なんです。それがそれでまとまったらいいなと思っていますね。

――まだ『我旅我行』を見ていない人に、どこに注目してほしいですか?

桑島:過去4回(フランス、ポーランド/ドイツ、沖縄、スペイン)、自分たち夫婦が旅行をした写真と、コロナ禍の日常の写真を行ったり来たりする往復の写真集なんですけど、自由に動けたときと、そんなに動けないいまの往復なんです。前回の写真集は順番に見ないとよくわからない写真集だったけど、今回の写真集はどこから開いても面白い感じになっているので、イメージを見に行くくらいの感じで見てもらえたらいいと思います。仕掛けがあったりもして、とくに沖縄の写真とかわかりづらいと思うんですけど、よくよく見ると段々わかってくるので、そういうのを解読してもらったりしていただけると嬉しいです。

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■書籍情報
『我旅我行 GA RYO GA KO』
写真・著:桑島智輝
著:安達祐実
価格:本体2,600円+税
出版社:青幻舎
公式サイト

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