映画から戦争を知る『日本の戦争映画』 著者・春日太一が込めた痛切な想いに触れて

春日太一『日本の戦争映画』を読んで

 年月を経て戦争体験者も減り、戦火を受けた土地・建物も姿をかえ、戦争そのものが風化していく。それは仕方がないことでもあるが、映画に描かれたことによって、その世代間の断絶を少し和らげることができるのではないか。最後に収録された『この世界の片隅に』の監督・片渕須直との対談はそんなことを思わせた。戦争と普段の日常が地続きであることを、次の片渕の発言からも強く感じる。

日常から出発してるんだけど、その日常自体がどんどんどんどん不穏さを増していって。その不穏の中でもまだ「普通」でいたはずなのに、その「普通さ」が吹き飛ばされてしまうわけですからね。

 知らないふり・見ぬふりをすることは罪なことだと思う。フィクションである映画を通してでも、戦争を知り・見ることは、戦争を体験していない我々にとって大切なことではないだろうか。

 本書はこれまでの春日の著作に通じる、映画に馴染みのない人々でも読むことのできる門戸の広い一冊だ。そして、研究家としての冷静な分析が冴えつつも、一個人としての痛切な想いがほとばしってくる、そんな一冊だった。

■山本亮
埼玉県出身。渋谷区大盛堂書店に勤務し、文芸書などを担当している。書店員歴は20年越え。1カ月に約20冊の書籍を読んでいる。マイブームは山田うどん、ぎょうざの満州の全メニュー制覇。

■書籍情報
『日本の戦争映画』(文春新書)
著者:春日太一
発売日:2020年7月20日
定価:本体880円+税
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784166612727

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