『アクタージュ』夜凪と千世子の戦いは、脚本家と演出家の戦いへーー物語の意味を変える“解釈と演出”

『アクタージュ』演劇と漫画の面白さを堪能

 『週刊少年ジャンプ』で連載されている『アクタージュ act-age』(集英社)はマツキタツヤ(原作)と宇佐崎しろ(作画)による演劇漫画だ。

 主人公の夜凪景は、役に没入するメソッド演技の才能を持った天才女優。物語は映画監督の黒山墨字に芝居の才能を見いだされた夜凪が、様々な芝居を経験することで、役者として人間として成長していく姿を描いている。

 最新刊となる12巻では、夜凪のライバルで“天使”と呼ばれる若手人気女優・百城千世子のダブルキャスト対決が、クライマックスを向かえた。2人が演じるのは『西遊記』を脚色した戯曲『羅刹女』。原作者の山野上花子が演出を務め、夜凪が主演を演じる「サイド甲」VS黒山墨字が演出を務め、千世子が主演を務める「サイド乙」による興行対決は、初日公演の映像が全国のシネコンとネットの動画配信サイトで世界同時公開された。

※以下、ネタバレあり。

 ついに向かえた上演初日。怒りの権化と化した羅刹女と同一化するため、夜凪は封印していた「父親に捨てられた記憶」を自ら掘り起こし、その怒りの感情を火種として羅刹女になりきろうとする。そして公演直前に山野上が夜凪の母親が亡くなったときに父親といっしょにいたと告げたことで、その怒りは臨界点を超える。

 夜凪の芝居は鬼気迫るものとなり、作品を破綻寸前まで追い込むが、共演俳優の大賀美陸たちの演技に支えられ、なんとか終盤まで持ち込むことができた。しかし、最後の最後で夜凪は緊張の糸が切れてしまい、演技ができなくなってしまう。心無い演技をしようとした夜凪の腕を掴むことで彼女を止める大賀美。夜凪が泣き崩れたところで幕が閉じ、観客は混乱する。

 翌日、「サイド乙」が上演すれば、「サイド甲」の舞台終盤の展開がトラブルだったことがわかり、千世子たちの勝利が自動的に確定する。しかし、夜凪の芝居を見た千世子はその演技に圧倒され「私の芝居では勝てないのに」と、敗北感に打ちひしがれる。

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