5人に1人の割合で存在ーー敏感すぎて辛い「HSP」が人生を楽しむための『53の幸せリスト』
成果主義をやめて「主観の世界」で生きる
成果主義から一歩、外に出る。……そう聞くと、なんだか難しく思えるかもしれないが、これは言い換えれば、自分が感じた小さな幸せをじっくりと噛みしめようということ。小さな違いにも気づける繊細さんの「感じる力」はストレスのもとになる一方で、ちょっとしたことを深く味わえる「幸せの源」にもなる。そこで、武田氏は自分を後回しにしない「繊細さの活かし方」を知り、成果という客観の世界ではなく、主観の世界に目を向けることで幸せを掴もうと提唱している。
成果主義は他者からの評価があってこそ、成り立つもの。繊細さんは人のために自己犠牲しやすいため、こうした環境の中に身を置いたり成果主義をポリシーにしたりすると、生きづらさを感じ、心身ともに疲労困憊しやすい。
だから、まずは成果主義をやめ、自分ためにもっと時間を使ってもいいのだと自分自身に許可を下すこと必要がある。ごはんがおいしい、晴れて嬉しいなど心にじんわりと湧いてくる幸せをじっくりと噛みしめ、繊細さをポジティブな方向に伸していくのだ。
このアドバイスは、仕事に忙殺され、生産性のない時間に目を向けず生きている筆者の心に、特に染みた。隙間時間ができても休んではいけない。生産性のない時間は作ってはいけない。そんな見えない呪縛が心のどこかにあることに気づき、生き方を見直したくなった
また、繊細さんはインプットする情報量が多いからこそ、感じすぎたらアウトプットして刺激を流すことも重要だと武田氏は語る。たとえ楽しいことであってもいつもと違うことは刺激となるため、自分の気持ちを文字や絵にしたり、歌ったりして心身に溜まった感情を吐き出すとよいのだそう。こうしたアドバイスの数々は、もやがかかった心を照らしてくれるようだった。
本書に記された全53の幸せのコツ。それは、自分にとって、なぜフリーライターという職業がこれほどまでにしっくりきているのかも教えてくれた。自分しかいない空間で、深く掘り下げた想いや本音を紡ぐ時だけは誰かのためではなく、私ファーストになれ、ありのままの自分で呼吸できているような気がする。文字に感情を込めて、記事を生み出すこと。それは生きづらさに苦しむ自分が見つけた、生命を維持するための作業だったのかもしれない。
時折、持ち前の成果主義が顔をのぞかせ、アクセス数やクライアントの反応、読者の反響などが気になって文の中で死にそうになってしまうこともある。けれど、そんな時は本書を読み返し、「書きたいものを書く」という気持ちを心の中で伸ばしてあげたい。ウケ狙いではなく、自分の感情を詰め込みながら、誰かの心になんとなく染みる文を書き続けていこう。そう素直に思えもした。
大嫌いな自分の気質。それを「自分の武器」だと言える日が来るよう、「繊細さん」を楽しんでいきたい。
■古川諭香
1990年生まれ。岐阜県出身。主にwebメディアで活動するフリーライター。「ダ・ヴィンチニュース」で書評を執筆。猫に関する記事を多く執筆しており、『バズにゃん』(KADOKAWA)を共著。
■書籍情報
『今日も明日も「いいこと」がみつかる 「繊細さん」の幸せリスト』
著者:武田友紀
出版社:ダイヤモンド社
https://www.diamond.co.jp/book/9784478109328.html
『「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる 「繊細さん」の本』
著者:武田友紀
出版社:飛鳥新社
http://www.asukashinsha.co.jp/bookinfo/9784864106269.php