Amazonで本の在庫切れが続出 入荷制限から再考する、出版の未来

Amazon入荷制限から考える、本の未来

Amazonとの付き合い方を再考しよう

 今回の騒動は、読者にとっても出版社にとっても、Amazonとはわれわれにとってどんな存在なのかを改めて考える良い機会になったのではないだろうか。

 Amazonが登場する以前の取次や書店の商慣習に問題がなかったとは言わないが、Amazonが影響力を強めることに対して危機感をもって対処してきた結果、従来の問題点は徐々に改善されてきていた。

 「とりあえずAmazonでポチる」を続けることが果たして本の未来にとって、われわれの読書環境の未来をよくすることなのか、考えたほうがいいタイミングに来ている。

 以前から言われていたことだが、本を買うならなるべく近所のリアル書店で買う、ネット書店はAmazon以外の版元ドットコムなどを使う(あるいは今なら版元から直接通販で買う)、本以外も国内企業のECサイトを使った方がいいと個人的には思っている。二昔前ならともかく、いまや利便性でAmazonとそれ以外で大きな差はない。

 一般論として、本の話に限らず、多様な選択肢を残しておかないと、ひとつのところに頼るようになっては危険すぎる。Amazonが書籍の買い切り方式を導入するとか再販制度を破壊しようとしているといった話が以前から出ていたが、その目的は何か? よく想像してみてほしい。

 本の購買者をこれほどまでにあとまわしにしているAmazonは、本当にユーザーファーストな企業だろうか? Amazonは本好きの味方か? 敵か? 出版社には在庫があるにもかかわらず無数の本が「一時的に在庫切れ; 入荷時期は未定です。」と表示され、放置されている今こそ、考えてみてもらいたい。

■飯田一史
取材・調査・執筆業。出版社にてカルチャー誌、小説の編集者を経て独立。コンテンツビジネスや出版産業、ネット文化、最近は児童書市場や読書推進施策に関心がある。著作に『マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの? マンガアプリ以降のマンガビジネス大転換時代』『ウェブ小説の衝撃』など。出版業界紙「新文化」にて「子どもの本が売れる理由 知られざるFACT」(https://www.shinbunka.co.jp/rensai/kodomonohonlog.htm)、小説誌「小説すばる」にウェブ小説時評「書を捨てよ、ウェブへ出よう」連載中。グロービスMBA。

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