『Olive』は令和の若者に受け継がれるのか? 1号限定復活『anan特別編集 Olive』に見る“雑誌”のチカラ

『Olive』は令和の若者に受け継がれるのか?

 そんな中、コアな層に絶大な支持を持つ『Olive』が令和版として復活したことには大きな意味があっただろう。かつてサブカルチャーを牽引したオリーブらしい紙面構成の『anan特別編集 Olive』は、菅田将暉にメゾン マルジェラのレディースアイテムを着せ小松菜奈とのツーショットを撮影したり、スナップページには映画監督のジム・ジャームッシュのインタビュー本を片手に持った女性が登場、巻末のカルチャーページには瀧川鯉八の創作落語が丸々載っていたりする。今のサブカル好きの少女が痺れるポイントを臆することなく網羅し、攻め込んだ1冊となっている。

 ジャームッシュの『パターソン』(2016)が公開された頃、限定のマッチ箱やノートをもらうためにいち早く映画館に駆け込んだ少女や、オーディトリウム渋谷の跡地にできたユーロライブで定期的に開催される「渋谷らくご」で瀧川鯉八に魅了された若者たちはこの紙面に関心を注がないわけがない。さらにこういったカルチャーに夢中な層にとって、懐古主義的なアクションはより、魅力を放つ。雑誌として「ページをめくる」ことは、今の若者がフォルムカメラやレコードに夢中になり、祖父母や両親の服をヴィンテージとして身につけることと地続きの現象だろう。

 今の少年・少女はよりクリエイティブに、ジェンダーの垣根もなく、発信するチャンスをたくさん手にしている。そして吸収するチャンスもまた、同じように溢れるほど持っているのだ。その中から、『anan特別編集 Olive』のように、よりターゲットがコアでそこに向けて丁寧に編集された雑誌は彼らの琴線に大きく響くだろう。こうしてまた、新たなオリーブ少女が、そしてオリーブ少年が生まれる。時代は廻るとはよく言うが、『Olive』の当時から重視していたサブカルチャーへの力強いプッシュとロマンティックを追い求めるマインドは、令和の若者にきちんと受け継がれ、相応にアップデートされつつ継承されているのだ。

■Nana Numoto
日本大学芸術学部映画学科卒。映画・ファッション系ライター。映像の美術等も手がける。批評同人誌『ヱクリヲ』などに寄稿。Twitter:@nanaics

『anan特別編集 Olive(ボーイフレンド版)』

■書籍情報
『anan特別編集 Olive』
発行:株式会社 マガジンハウス
定価:880円 (税込)
<発売中>
出版社サイト
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