『FACTFULNESS』から『メモの魔力』まで 2019年ヒットのビジネス書、キーワードは“現実”

2019年“売れた”ビジネス書を分析

5.大局をつかむ系

『ビッグ・クエスチョン』
『残業学』
『平成はなぜ失敗したのか』
『やってはいけない7つの『悪い』習慣』

 これからこうなる系に近いものの、過去の分析や哲学的な話も含む。『残業学』『平成はなぜ失敗したのか』『やってはいけない7つの『悪い』習慣』などネガティブなことを構造的に検証・指摘するものが流行った模様。

 これと近いものに『○○消滅』的なホラーストーリーで煽る、絶望させるものも流行ジャンルとしてあるが、今年はランキング最上位にまでは来ず、結論が前向きなネガティブ検証・指摘もののほうが上に来たのかもしれない。

6.流行のビジネスモデルやテクノロジー、メソッド解説系

『サブスクリプション』
『OODA LOOP(ウーダループ)』

 10年後にはすたれているけど瞬間最大風速ではバズワードになる系の2019年版。

7.隠された秘密、世界の真実系(陰謀論含む)、ふだん見られない世界を知れるもの

『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』
『FEAR 恐怖の男』
『経済で読み解く日本史 文庫版5巻セット』

 歩くフェイクニュースであるトランプの内膜を暴いた本『FEAR』、世界は実はよくなっていることを事実ベースで紹介していく『FACTFULNESS』、今年は「桜を見る会」騒動などファクトレスな安倍政権に好意的な上念司の経済史本が並んでいるのが象徴的。

 やはり仕事に関するノウハウものが多いものの、「ラクして成功する」的な本はそこまで流行らず、わりとどれもちゃんと集中する、効率をよくすることに意識が向いているのが、さすがにもうみんな現実見えてるな感がある一方で、絶望的な内容の本もトップセラーにまでは来なかったことで、同時に、まだそこまでのハードコアすぎる現実は突きつけられたくないのかもしれないとも思えるラインナップだった。

■飯田一史
取材・調査・執筆業。出版社にてカルチャー誌、小説の編集者を経て独立。コンテンツビジネスや出版産業、ネット文化、最近は児童書市場や読書推進施策に関心がある。著作に『マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの? マンガアプリ以降のマンガビジネス大転換時代』『ウェブ小説の衝撃』など。出版業界紙「新文化」にて「子どもの本が売れる理由 知られざるFACT」(https://www.shinbunka.co.jp/rensai/kodomonohonlog.htm)、小説誌「小説すばる」にウェブ小説時評「書を捨てよ、ウェブへ出よう」連載中。グロービスMBA。

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