Age Factory、TENDOUJI、a flood of circle……ライブバンドの矜持を磨き続け初武道館へ 3組に共通する“熱さ”

 コロナ禍が明け、ライブハウスシーンが完全復活を果たしてから早数年。近年のライブハウスシーンは、新しい世代のリスナーを巻き込みながら非常に大きな盛り上がりを見せていて、その中から、初の日本武道館公演を開催することを発表したバンドも続々と現れている。そうした数あるバンドの中から、今回は、Age Factory、TENDOUJI、a flood of circleの3組を紹介していく。この3組に共通するのは、10年、15年、20年近いキャリアを通して、ライブハウスを主戦場としながら、少しずつ、しかし着実にリスナーからの支持と信頼を集めてきたこと。TikTokをはじめ、SNSを起点としたバズや映像作品とのタイアップなどでのヒットとはまた違う、ひたすら愚直に、誠実にライブバンドとしての矜持を磨き続ける3組のライブの熱さについて、書き記していきたい。

圧倒的な気迫と手を差し伸べる温もりを両立するAge Factory

Age Factory "Shadow" Songs Release Tour 2024 Zepp DiverCity (Apr. 17, 2024)

 Age Factoryのライブは、一言で言えば壮絶だ。書き手という立場としてこういうことを書いてしまうのは本当はよくないのかもしれないが、あえて書きたい。7月リリースの最新アルバム『Sono nanika in my daze』のタイトルが象徴するように、彼らの凄まじく壮絶なロックアクトを観るたびに、五感で感じる“その何か”を言葉にして表すのは野暮と思えるくらい、えも言われぬ気持ちで胸がいっぱいになる。清水英介(Vo/Gt)は、ライブ中、「全員でいこう」「ここにいる全員つれてくよ」「いこう!」「俺たちの方向へ」と観客に呼びかけることが多い。彼らが打ち鳴らす轟音は圧倒的な気迫を放ち、凍てつくような手触りではあるが、同時に、一人ひとりの観客にそっと手を差し伸べるような温もりも感じさせる。それは、自分たちのライブに集まってくれた人を誰一人置き去りにしないという揺るぎない意志の表れだろう。11月3日のZepp DiverCity (TOKYO)公演の中盤、清水は「15年間やってきたことは間違ってなかった」と語った。そしてライブの最後に、「俺たちは新しい場所へ向かう」と明言し、2026年11月に初の日本武道館公演を開催することを発表した。筆者もその場に立ち会っていたが、あの時のいつまでも止むことのない観客の歓喜の声とどよめきは今でも覚えている。初の日本武道館、間違いなく、果てしなく壮絶な一夜になるはず。

TENDOUJIの“EASY PUNK”が生み出す最高の光景

TENDOUJI "Kids in the dark-Stupid!!" LIVE

 TENDOUJIの武器は、ポップパンクを軸とした快活かつ熱烈なサウンドと、全方位に開かれたメロディ。理屈や理論を超えて、否応もなく心が熱く震え、抗いようもなく身体が動く。一言で言えば、とにかく楽しい。何より、観客が自由にTENDOUJIの音楽を謳歌するフロアの光景は、言葉を失うほどに美しい。彼らは、11月12日にZepp DiverCity (TOKYO)で開催した999円ワンマンライブ『“BUDOKAN” 元気でいてね』の中で、2027年2月に日本武道館での単独公演を開催することを発表した。2014年、28歳の時にバンド経験なしの中学時代の同級生で集まってバンドを始め、それから10年以上経ったタイミングでの初の武道館公演の開催。武道館に立つ頃には、メンバーのほとんどが40代に突入している。いつ何を始めてもいいし、いつ何を夢見たっていい。年齢なんて関係なく、自分たちの夢を形にしていく彼らの姿は、後進のバンドマンとリスナーにとっての輝かしい希望になる。

a flood of circle、ロックンロールの核心を突くライブスタンス

【Honey Moon Song】- a flood of circle デビュー15周年記念公演“LIVE AT 日比谷野外大音楽堂”

 a flood of circleのライブは、いつだって、荒々しく、激しく、豪快。そして矛盾するようではあるが、どこまでも洗練されている。そこで歌われ、鳴らされるのは、ロックンロールの核心を純度高く体現する音と歌のみ。それ以外の全てを思いっきり捨象して爆走するような潔さを、ライブの全編から感じる。ロックを愛する者、ロックを信じる者、そして、否応もなく切実にロックを求めてしまう者。全ての観客の想いを背負いながら、ロックンロールだけが描き出せる魔法のような景色を目指して力強く疾走していく4人の姿は、もはや求道的ですらある。筆者は、11月9日に行われたフリーライブ『I'M FREE 2025 LIVE AT 新宿歌舞伎町野外音楽堂』に立ち会った。〈武道館 取んだ3年後 赤でも恥でもやんぞ〉と歌う「ゴールド・ディガーズ」の次に披露した新曲「夜空に架かる虹」の中で、佐々木亮介(Vo/Gt)は、2026年(「ゴールド・ディガーズ」をリリースした2023年から“3年後”)の5月に日本武道館公演『a flood of circle 20周年記念公演 LIVE AT 日本武道館』を行うこと、つまり、積年の夢を叶えることを宣言した。最後の歌詞〈5月6日 武道館/目を開けて夢を見ている〉が歌われると同時に会場全体から沸き起こった凄まじい歓声は、今でも忘れられない。その余韻が冷めやまぬ中で披露したラストの「月夜の道を俺が行く」では、佐々木は〈俺らの夢を叶えるやつらは俺らしかいない〉〈俺らは行く 月夜の道を〉と歌詞の一人称を〈俺ら〉に替えて歌った。その日、彼ら4人が夢を叶えるのを、私たちはただ観に行くのではない。“俺ら”で、その夢を叶えにいく。〈5月6日〉がドラマチックな日になることは、すでに約束されている。

※1:https://rollingstonejapan.com/articles/detail/43881
※2:https://youtu.be/VJNfh0-zIJY?si=v-kJDG2oojrCWPwn
※3:https://realsound.jp/2025/11/post-2220527.html

a flood of circle、ついに叶える積年の夢 武道館ワンマン発表で歌舞伎町をどよめかせた熱狂のフリーライブ

a flood of circleがホームである新宿・歌舞伎町にて、ニューアルバム『夜空に架かる虹』のリリースを記念したフリーラ…

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