マカロニえんぴつ、今だからこそ追求した“生々しさ”　原点を見つめ直した新作『physical mind』を4人で語る

『physical mind』で発揮された4人それぞれの色

――アルバムの1曲目「パープルスカイ」もライブが見えてくるような楽曲ですよね。

はっとり：「パープルスカイ」は確かに、「ここで歓声が上ったらいいな」みたいなことをイメージしながら作ってましたね。「そういえば最初の頃はこういう作り方してたな」とか思って。あるときから「これはもうやったしな」という感覚が出てきちゃったんですよ。同じことを繰り返したくなくて、違うことを追求しているうちに複雑化していくというか。今回は気持ちがいいものを優先したし、自他ともにアガるほうがいいかなと。

――ある意味、原点回帰というか。

はっとり：そうですね。ありがたいことに、今はホールツアーが当たり前のようにできるようになって。アリーナやスタジアムもやらせてもらいましたけど、やっぱりどこかあまのじゃくというか（笑）、「我、ここにあり」みたいな感覚でやれる曲を求めていたんでしょうね。「いつか何もない世界で」もライブハウス感があるような気がするし、「然らば」「化け物」もZeppくらいが似合う曲というか。俺が作った曲は、そういうところに回帰している感じがありますね。

――その一方で、タイアップ曲を中心にポップな大衆性もしっかりあって。そのバランスはどうやって取っているんですか？

はっとり：今回のアルバムに入っているタイアップ曲は、すごく自由度高くやらせてもらった曲ばかりなんですよ。打ち合わせの段階から「マカロニえんぴつのスイートスポットをしっかり出してもらえたら」みたいなことを言ってもらえるし、こっちとしても遠慮や気遣いをせず、やりたいことを表現できて。そこも恵まれてるなと思いますね。

――田辺さん、長谷川さん、高野さんが作曲した楽曲も『physical mind』の大きなポイントだと思います。「ロング・グッドバイ」は田辺さんの作曲。

田辺：この曲はデカい会場をイメージしていたところがあって。自分が憧れてきたアーティストやギタリストはスタジアムでやっていたりするし、そういうスケールの音像に憧れがあるんですよね。この曲を作ったときは横浜スタジアムのライブも発表されていたから、そっちに引っ張られたところもあると思います。結局、ハマスタでは演奏しなかったんですけど（笑）。

はっとり：そうだね（笑）。

――長谷川さん作曲の「きみは天使で」は、ジャンルの壁を超えるような楽曲だなと。

はっとり：確かにジャンル分けはできない（笑）。

長谷川：そうかも。「きみは天使で」は、自分なりの子守歌のつもりで作り始めたんですよ。今って、大人も子供も疲れているような気がして。子供も無邪気さがないというか……。

はっとり：言い切っていいの（笑）？　でも、わきまえちゃってる子供もいるのかも。

――塾通いとか中学受験も当たり前だし、ストレスありそうですよね。

長谷川：親も「ちゃんと育てなきゃ」という気持ちがあると思うんですけど、「しっかりしなさい」っていわれて、それを演じているというか。

はっとり：余裕がない大人を見て、子どものほうが気を使ったりね。

長谷川：そうそう。なので、せめてこの曲を聴いているあいだくらいは、みんなが安らげたらいいなと。

――高野さん作曲の「ハナ」も心が落ちくようなメロディですよね。

はっとり：いい曲ですよね。歌っててウルッときました。

高野：『みんなのうた』（NHK総合／NHK Eテレ）で放送してもらっている曲なんですけど、僕も小さいころ、『みんなのうた』をよく観ていて。おちゃらけた曲もあるんですけど、僕はどちらかというと、しんみりした感じの曲に耳を奪われていたんです。「ハナ」を作るときも、落ち着いた懐かしい雰囲気のある曲にしたくて。あと、よっちゃん（田辺）には速弾きのギターソロを弾いてほしかったので、後半はテンポを倍にしました。ずっと平坦なままより、それくらい飛びぬけた展開のほうがマカロニらしいかなと。

田辺：しかもツインギターのソロですからね。

――曲の前半にGuns N' Rosesを想起させるフレーズもありますね。

はっとり：お、初めて言われた。けっこうわかりやすく入れてるのに、ぜんぜん指摘されないんですよ（笑）。

田辺：そうだね（笑）。ガンズは全然リアルタイムじゃないんですけど、後追いで聴いて。

はっとり：俺が空耳したというか、賢也が作ったデモに入っていたフレーズがガンズに聴こえちゃったんですよ。これまでのアルバムもそういうオマージュはちりばめていたんですけど、憧れから離れたかったというか、今回は意図的に入れてなくて。でも「あまりにもやらなすぎじゃない？」と思って、このフレーズを入れてもらいました。賢也さんの許可も得ずに。

高野：ははは（笑）。

――（笑）。でも、4人それぞれの色が出ているのはすごくいいですよね。

はっとり：うん、そうですね。自分の曲はシンプルに傾いていたんだけど、メンバーの曲によって幅が広がって。ユニコーンじゃないけど、メンバーのキャラが立ってるのは自分の憧れでもあるし、これからもやっていきたいスタイルなので。

――個人的には「高円寺へ」も印象的でした。〈誰もが何かになりたいと思っている街〉というフレーズもありますが、はっとりさんにも何者かになろうとあがいていた時期があったはずなので。

はっとり：言ったら、今もどこに向かっているのかわかってないところがありますけどね（笑）。本当に「自分はどうなりたいんだろう？」と思っていたのは、大学に入った頃とバンドを組んで、なかなか評価されなかった時期なのかな。『青春と一瞬』（2019年）を出すくらいまではそうでしたね。奥田民生になりたいんだけどなりたくなくて、ユニコーンみたいにやりたいんだけど、それじゃ「マカロニえんぴつじゃなくていい」と思えてきたり。そういう時期は辛くもあったので、長く感じているかもしれないですね。

田辺：今日（取材が行われた11月4日）でちょうどメジャーデビュー5周年なんですよ。その前の5年はインディーズだったんですけど、同じ5年間とは思えなくて。大変だったというか、苦労した時期は長く感じるのかも（笑）。

長谷川：うん。

はっとり：俺、ギターを持って混んでる小田急線に乗らなくちゃいけないのがとにかく苦痛で。

田辺：ギターとエフェクターボードを持ってね。

はっとり：ネックを守りながら乗るんだけど、周りの人に「なんだこいつ」という目で見られたり。黒のギターケースで“ザ・バンドマンコーデ”みたいになるのがイヤで、青いケースにしていたんですよ。

高野：確かに青かった（笑）。

はっとり：「この状況から抜け出したい」というのもモチベーションだったかもしれないです（笑）。もちろん、そういう時期も必要なんですけどね、絶対に。ああいう経験がなかったら、感謝を持てない人間になっていたかもしれないので。

――アルバムの最後は、はっとりさんの弾き語りによる「クレイジーブルース」。まさにフィジカルを感じる、生々しい楽曲だなと。

はっとり：弾き語りの曲はアルバムのたびに入れているんですけど、この曲はとくに“録って出し”感がありますね。自分の部屋で作って、その場でマイクを立ててひとりで録ったんですよ。寒くなってきて、いろいろと余計なことを思い出したり、無性にひとりになりたかったり。そういう表現をしたくて、ちっちゃい声で歌いました。

――マカロニえんぴつの生の声、生の音が体感できるこのアルバムを象徴する楽曲だと思います。フィジカル重視のモードはまだ続きそうですか？

はっとり：このアルバムで1回やり切った感もあるんですよね。最初に言ったように「好きなこと、得意なことだけをやろう」というテーマで臨んだんですけど、ずっと同じことをやっていても成長できないし、インプットも必要なので。グルーヴを追求する曲だったり、チャレンジングな曲調だったり、そういうこともやっていきたいなと。まあ、来年のツアーをやってみないと、次のモードがどうなるかはわからないですけどね。

■リリース情報
メジャー3rdアルバム『physical mind』
発売中
特設サイト：https://macaroni-special.com/physical_mind/
配信リンク：https://tf.lnk.to/physical_mind

＜収録内容＞
01. パープルスカイ
02. いつか何もない世界で
03. poole
04. 月へ行こう
05. ロング・グッドバイ
06. きみは天使で
07. NEVERMIND
08. 化け物
09. 高円寺へ
10. 静かな海
11. ハナ
12. 忘レナ唄
13. 然らば
14. NOW LOADING
15. クレイジーブルース

＜商品形態＞
・完全生産限定盤（OKKAKE盤） ［CD＋Blu-ray］
　（※FC会員限定販売 | 透明スリーブケース付き特別仕様）
　PPTF-8190～8191／￥6,600（税込）

・初回生産限定盤A （Billboard盤）［CD＋Blu-ray］
　（※透明スリーブケース付き特別仕様）
　TFCC-81171～81172／￥6,600（税込）

・初回生産限定盤B（hope盤）［CD＋Blu-ray］
　（※透明スリーブケース付き特別仕様）
　TFCC-81173～81174／￥6,600（税込）

・初回仕様限定盤（通常盤）［CD］
　TFCC-81175／￥3,300（税込）

＜Blu-ray 収録内容＞
・完全生産限定盤（OKKAKE盤）
2024年2月29日 KT Zepp Yokohama
『マカロックツアーvol.17 ～思ひ出いっぱい☆地元へ帰ろう編～』

・初回生産限定盤A （Billboard盤）
2025年7月30日 Billboard Live TOKYO
『NANO universe×Billboard Live “music from NANO universe”』

・初回生産限定盤B（hope盤）
2025年3月14日 仙台PIT
『マカロックツアーvol.19 ～いざvol.10のリベンジ!持ち寄ろう、それぞれのhope篇～』

■公演情報
『マカロックツアーvol.21 ～心を覗いてシラけるより、ことばのシワだけ増やしてゆけ篇～』
2025年1月17日（土）埼玉・狭山市市民会館 大ホール
2025年1月18日（日）埼玉・狭山市市民会館 大ホール
2025年1月23日（金）兵庫・アクリエひめじ 大ホール
2025年1月24日（土）和歌山・和歌山県民文化会館 大ホール
2025年1月31日（土）石川・金沢歌劇座
2025年2月1日（日）新潟・新潟県民会館 大ホール
2025年2月7日（土）広島・広島文化学園HBGホール
2025年2月8日（日）山口・KDDI維新ホール
2025年2月11日（水•祝）鳥取・米子コンベンションセンター BIG SHIP
2025年2月14日（土）高知・高知県立県民文化ホール オレンジホール
2025年2月15日（日）香川・レクザムホール 大ホール
2025年2月21日（土）宮城・仙台サンプラザホール
2025年2月22日（日）青森・リンクステーションホール青森
2025年2月26日（木）愛知・Nitterra日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
2025年2月27日（金）愛知・Nitterra日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
2025年3月6日（金）静岡・アクトシティ浜松 大ホール
2025年3月11日（水）東京・東京ガーデンシアター
2025年3月12日（木）東京・東京ガーデンシアター
2025年3月15日（日）北海道・札幌文化芸術劇場 hitaru
2025年3月16日（月）北海道・札幌文化芸術劇場 hitaru
2025年3月25日（水）福岡・福岡サンパレス
2025年3月26日（木）福岡・福岡サンパレス
2025年3月30日（月）大阪・フェスティバルホール
2025年3月31日（火）大阪・フェスティバルホール
2025年4月4日（土）沖縄・沖縄コンベンションセンター劇場

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