マカロニえんぴつというバンドと音楽の“祝福の祭典” デビュー10周年、初スタジアムワンマン2日目をレポート

マカえん横浜スタジアムワンマン2日目レポ

 今年デビュー10周年を迎えたマカロニえんぴつが、キャリア初のスタジアムワンマンライブ『マカロニえんぴつ 10th Anniversary Live「still al dente in YOKOHAMA STADIUM」』を6月14、15日に横浜スタジアムで開催した。バンド結成の地である神奈川県の横浜で、マカロニえんぴつ史上最大規模のワンマンライブとして行われた本公演。14日公演はインディーズ期、15日公演はメジャー期にスポットを当てるなど、これまでのキャリアを振り返るようなセットリストで、2日間で計5.5万人のマカロッカー(マカロニえんぴつファン)を魅了した。なお、本稿では15日公演について記す。

 梅雨の影響で雨の中敢行した14日公演から一転、この日は快晴に恵まれた。多くのオーディエンスが開演を待つ中、会場のスクリーンにはメンバーが野球を楽しむ様子や、緑黄色社会やSUPER BEAVERなどバンドとゆかりの深い著名人からのお祝いメッセージ映像が上映される。そして、定刻を過ぎた頃にウグイス嬢により“プレイボール”が告げられると、ステージ上のブラスバンドの演奏に合わせて、リリーフカーに乗ったメンバーがグラウンドに登場。ユニフォーム姿のはっとり(Vo/Gt)、高野賢也(Ba/Cho)、田辺由明(Gt/Cho)、長谷川大喜(Key/Cho)にサポートメンバーの高浦“suzzy”充孝(Dr)は観客に手を振りながら会場を一周してステージに到着すると、彼らのライブではお馴染みのThe Beatles「Hey Bulldog」が流れる中ライブの準備に取り掛かる。

マカロニえんぴつ ライブ写真(撮影=酒井ダイスケ)
(撮影=酒井ダイスケ)
マカロニえんぴつ ライブ写真(撮影=後藤壮太郎)
(撮影=後藤壮太郎)

 ハマスタという会場ならではの演出で場を温めると、はっとりの「ハマスターっ!」を合図に「トリコになれ」からライブはスタート。バンドが生み出す極上のグルーヴとブラスセクションを迎えたスペシャル編成による華やかなサウンドが響き渡ると、会場は早くも幸福感に包まれていく。続くアップチューン「鳴らせ」でギアが一段高く入ると、客席のテンションも急上昇。はっとりの伸びやかな歌声が青空に響き渡る中、高野や田辺はステージ両サイドに散って大会場でのステージを満喫していく。その後も長谷川が奏でる軽快なピアノにオーディエンスのシンガロングが重なる「レモンパイ」や、〈待っていたんだ〉というフレーズにちなんで客席に「待ってた?」と問いかける「洗濯機と君とラヂオ」と、バンドの基盤を作り上げた楽曲群の連発で会場の一体感はどんどん高まっていった。

マカロニえんぴつ ライブ写真(撮影=後藤壮太郎)
長谷川大喜

 「昨日は大雨の中でしたけど、それはそれで一生忘れられないライブになりました。今日はしっかりと晴れましたね」と笑顔で語るはっとりは、広い会場を見渡しながら「この景色は2日目でも慣れないね(笑)。本当に胸がいっぱいです」と感慨深げに話す。そして「今日はお祝いの日、大いにはしゃいでください。俺たちを祝ってくれ!」と叫ぶと、ブラス隊を除く5人のみで「MUSIC」を披露。少しずつ陽が落ち、会場に涼しい風が吹き込む中、「たましいの居場所」や「恋人ごっこ」「ブルーベリー・ナイツ」など新旧の人気曲が立て続けに繰り出され、さまざまな形でマカロニえんぴつならではの“愛の歌”が届けられていく。「なんでもないよ、」ではオーディエンスの大合唱が沸き起こると、これにはっとりが「素晴らしい! 上手!」と笑顔で応え、ライブはこの日最初のハイライトを迎えた。

 メンバーがアリーナ中央に設置された円形サブステージに移動すると、アカペラによるハーモニーが印象的な「ハッピーエンドへの期待は」にてライブを再開。ここからの数曲は前日の“インディーズ期セレクション”とは異なる“メジャー期セレクション”として披露され、オーディエンスに四方八方囲まれた形でより親密感の強さを演出することに。以降も「ルート 16」「はしりがき」「mother」と曲が変わるたびに、円形ステージが90度ずつ回転して観客を全方位で楽しませていく。

マカロニえんぴつ ライブ写真(撮影=後藤壮太郎)

マカロニえんぴつ 田辺由明 ライブ写真(撮影=酒井ダイスケ)
田辺由明

 和やかな空気の中進行していくサブステージでのライブも、次の曲で最後。はっとりが「ロックバンドは本当に楽しいです。いろんなところに連れていってくれるし、いろんな景色を見せてくれるから。ただ、それも誠実にやっている場合のみだと思っています。我々は本当にロックが好きで、ロックに憧れていて、そしてまだロックが遠くて、でもいつも隣にいてっていう、すごく幸せな中で日々音楽をやってます。だから、ロックに感謝を込めたり、音楽に出会った自分と音楽を信じたい自分を讃えながら歌います」と告げると、メンバー4人が歌いつないでいく「僕らは夢の中」にて中盤ブロックを締め括った。

マカロニえんぴつ ライブ写真(撮影=酒井ダイスケ)

 セットチェンジによるハーフタイムショーでは、横浜DeNAベイスターズのオフィシャルパフォーマンスチーム・diana、マカロニえんぴつのマスコットキャラクター・まかぴー君とその彼女・まか子が「哀しみロック」に乗せて、マカロッカーたちと息の合ったダンスで楽しむ場面も。そしてメインステージに戻ったバンドメンバーは、再びブラス隊を携えて「前世よ、しっかり」にてライブ後半戦に突入する。陽が沈み派手な照明演出が映えまくる環境下で、ガイコツマイクを手にしたはっとりはロックスター然としたアクションで観る者を魅了する。続く「ハートロッカー」でははっとりのみならず、トップギアが入った高野や田辺もステージ上を縦横無尽に動き回り、大会場をライブハウス同様の空気に作り変えていく。その後、ブラス隊を見送りステージ上は5人のみに。はっとりの「まだできるって認識で合ってますか? 昨日と同等、あるいはそれ以下だったらどうしてくれる(笑)? ロックは無茶をすることじゃないのか? 無茶しようぜ!」という煽りから「ワンドリンク別」に突入すると、会場の熱気は急上昇。続く「愛の波」では豪快なパイロ演出も用意され、オーディエンスのシンガロングもより一層大きさを増していく。

 その後も夜空を飛び交う無数ものレーザー演出とともにハマスタを巨大なクラブへと一変させる「STAY with ME」、曲終盤で無数もの花火が打ち上がる「星が泳ぐ」、会場中の照明がすべて点灯し観客の笑顔がはっきり見える中で披露された「ミスター・ブルースカイ」と、スタジアムライブらしい演出とともにライブはフィナーレへと近づいていく。はっとりがこの10年へ思いを馳せたメッセージとともに、「あなたが見つけた、あなたが一緒に歩くと決めた、マカロニえんぴつという音楽でした。その若さを握りしめたまま、一緒に歳をとりましょう。あなたのことが心から大好きです」と伝えると、バンドは「ヤングアダルト」を感情たっぷりに演奏。ここにオーディエンスのありったけの大きな歌声が乗ることで、曲に深みや重みを加えていく。コロナ禍以前に発表されたこの曲も、時代の変遷やバンドを取り巻く環境の変化を経て、メンバーやリスナーにとってより大きな意味を持つ楽曲へと進化したことを、この日じっくりと実感することができたのではないだろうか。

マカロニえんぴつ 高野賢也 ライブ写真(撮影=後藤壮太郎)
高野賢也

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